うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

秀山祭九月大歌舞伎 夜の部「ひらかな盛衰記」 9/10

秀山祭九月大歌舞伎、夜の部「ひらかな盛衰記 逆櫓」を幕見してきました。

 

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まずなんといっても吉右衛門さんの樋口が大きい!!
気のいい船頭・松右衛門から、木曽義仲の重臣・樋口次郎兼光への鮮やかな変化。
正直、身体や声には老いを感じましたが、以前ほど力みなく、さらさらと演っている感じもまた魅力的。

 

そして、歌六さんの権四郎が素晴らしいです!!
家族愛に溢れていて、ジジばかで、お天道様になんら後ろ暗いところのない一本筋の通った真っ正直な爺。
この爺だからこそ、樋口も必死で説得するし、理解が得られてほっともするんだよね、という説得力があります。


畠山重忠に縄打たれる場面の吉右衛門さん、歌六さん、二人の目の演技、すごくよかったです。

 

そして権四郎の娘・およしは東蔵さん。

いつもはもう少し老けた女性の役が多いのですが、今回は幼い子どものいるお母さん役。

巡礼の途中、夜に泊まった宿屋で起こった捕物騒ぎのせいで、取り替え子になってしまった槌松は死んだと聞かされて、形見の名前を書いた笈摺を抱きしめて「母じゃわいのぉ」と嘆く場面は本当に哀しくて…。

東蔵さんの演じる女性は、いつも理屈抜きの母性愛がほとばしっていて素敵なのですが、今回は歌六さん演じるお父さんの権四郎と二人、槌松を目の中に入れても痛くないほど可愛がっていたことがよくわかり、だからこそ亡くなったと聞かされた後の喪失感が辛く、やり場のない哀しみがこちらの胸にも迫ってきました。

逆櫓の場面は遠見の演出で、子役を使った「やっしっし」も観られましたし、艪を使った大立ち回りもあり、「こういう歌舞伎が観たかった!!」を堪能しました。

★Information

秀山祭九月大歌舞伎

歌舞伎座

夜の部「ひらかな盛衰記 逆櫓」

9/1(金)〜25(月)

 

船頭松右衛門 実は樋口次郎兼光:中村吉右衛門

漁師権四郎:中村歌六

お筆:中村雀右衛門

船頭明神丸富蔵:中村又五郎

同 灘吉九郎作:中村錦之助

同 日吉丸又六:中村松江

松右衛門女房およし:中村東蔵

畠山重忠:市川左團次