うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」昼の部 1/6

今年のお芝居初めは歌舞伎座から。

お正月らしい飾り付けに気分もあがります。

 

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お誘いいただき、1等席で。
いつも3階か幕見席から見下ろしてばかりなのですが、久しぶりの下界はきらっきらで見える世界が違いました!!

 

「舌出三番叟」
凛々しい男前な芝翫さんの三番叟に、きちんと折り目正しい魁春さんの千歳。
松羽目物で幕開けっていいですね。
ほどよく軽みもあって、お正月のおめでたい気分にぴったりのひと幕でした。

 

「吉例寿曽我」鴫立澤対面の場面
お正月の定番、曽我狂言
父の仇、工藤祐経を追ってきたはすが、待っていたのはその奥方・梛の葉御前…
という、寿曽我対面の女性版みたいな趣向。
舞台にずら〜っと女形ばかりが並ぶ光景がとっても新鮮。
その絵のど真ん中、梛の葉御前を演じる福助さん、去年の「金閣寺」に続き、お元気な姿を見ることができて嬉しかったです。

 

「廓文章 」(吉田屋)
清元の吉田屋! 新鮮、そして素敵!!
幸四郎さんの伊左衛門の、決して阿呆な子ではなく、育ちのよさがにじむぼんぼんっぷり。
しょぼ〜んとしているところも、夕霧に会える♪と舞い上がっちゃうところも、スネてふてくされているところも、とっても可愛かった♡
恋にやつれて、ほっそりと、儚げで消えちゃいそうな七之助さんの夕霧は、夢のような美しさ。
二人並ぶときらきらと眩しくて、本当に絵になる美男美女。
浮世離れしたお話&カップルも、お芝居だからこそ、の夢夢しい世界。
歌六さんの喜左衛門、秀太郎さんのおきさと、
脇もきりっと引き締まり、お正月からいいもの観たわ〜という多幸感でいっぱいです。

 

「一条大蔵譚」
白鸚さん、なんと47年ぶりという大蔵卿!!
このお歳になってもなお挑み続ける姿、かっこよくて惚れます…。
白鸚さんの大蔵卿は、阿呆の部分の滑稽さが薄めでちょっとシニカルな印象。
本心をあらわしたところは、大物の武将のような風格があって渋く、「源氏の血を引く…」という台詞にうなずけました。
幕切れの有名な台詞の数々をわりとさらっと言っておられて、義太夫狂言らしい面白みには欠けますが、シリアスな現代劇っぽい味は白鸚さんならでは、ですね。
これまで観てきた大蔵卿とは異なる雰囲気が新鮮で、役者さんによる違いを味わうという楽しさがありました。

「歌舞伎役者 片岡仁左衛門 登仙の巻」

国立映画アーカイブ開館記念のアンコール特集から「歌舞伎役者 片岡仁左衛門 登仙の巻」を観てきました。
13世片岡仁左衛門を追ったドキュメンタリーの最終巻です。

 

「荒川の佐吉」政五郎、「楼門五三桐」石川五右衛門、「菅原伝授手習鑑」車引の時平、「御浜御殿豊綱卿」勘解由、「鬼一法眼三略巻」奥庭の鬼一、そして最後の舞台になった「八陣守護城」清正。
新歌舞伎から古典まで、90歳になってなお、復活狂言や初役に挑む芝居の虫。
板の上ではすごくかっこいいのに、素顔はおっとりほんわかされていて、愛らしく、かつ高潔の人。
仮名手本忠臣蔵」の四段目で、判官と由良之助の二役を演じる夢を見て、切腹してるのに、
その場に駆けつけなきゃいけない、どうしよう…?と、うんうん悩み苦しんで目が覚めた…と語る場面は、そのお人柄がよく伝わるひと幕。

朝夕、ご先祖様への挨拶を欠かさず、「お父ちゃんに教えてもらったことがこの世界で生きていくうえで本当に役に立っている」と語る、家族への思いの強い方。
我當さんの梅王丸、当代の仁左さん(当時は孝夫)の松王丸、秀太郎さんの桜丸と、3人の息子が三つ子を演じ、自身は時平をつとめた舞台の幕が開く前、お念仏かなにかを一心に唱えていた姿が印象的でした。


芸談として興味深かったのは、寺子屋の松王丸が菅秀才の首実検をするときの型の話。
初世吉右衛門はじめ、さまざまな役者の型を実際にやってみせてくれるのですが、特筆すべきは六世菊五郎
さっとしたシンプルなやり方で、役の性根をわかりやすく表現する、極めて現代的な感覚を持っていて、だからこそ神のように崇めているんだなぁということが伝わってきました。

 

★Information

国立映画アーカイブ開館記念 アンコール特集

 

歌舞伎役者 片岡仁左衛門 登仙の巻

(1994年、自由工房)

監督:羽田澄子

英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2017/18 バレエ「マノン」

映画館でバレエ鑑賞。
英国ロイヤルバレエ団の「マノン」を見てきました。

 

原作はオペラやバレエ、映画にもなっている、アベ・プレヴォの『マノン・レスコー』。
音楽はジュール・マスネ、ケネス・マクミランによる振付。
お金持ちで好色なG.M.、乱暴な看守、妹の美しさを利用して成り上がろうとするゴロツキの兄…。
いろんな男の欲望をかき立てて、利用され、清楚で可愛らしい田舎娘から、女王のように美しく飾り立てた高級娼婦に、最後は罪人としてアメリカに送られ…と、どんどんボロボロになっていくマノン。

 

ファム・ファタールのイメージが強いですが、この作品では男性に翻弄されるか弱い少女という印象。
場面によってくるくると表情が変わり、あどけない少女のようにも、色っぽい大人の女性のようにも見える、サラ・ラムのマノンが素晴らしかった!!
デ・グリューとの甘い恋と、お金持ちの愛人がもたらしてくれる贅沢な生活の魅力。
愛は素晴らしいものだけど、生きて行くのにお金は必要と、現実を受け入れている大人なマノンで、デ・グリューを見つめる切ない表情がとくに印象的でした。

 

ワディム・ムンタギロフのデ・グリューも、キラキラと情熱的な青年で、ハマり役。
サラとの息もぴったりで、寝室と沼地、2つのパ・ド・ドゥは、この上ない美しさ。

 

ゴロツキの兄、レスコーは平野さん。
野心満々のギラギラした男臭い感じと、でもちょっと抜けているコミカルな味のバランスが抜群。
酔っ払いながら踊る2幕はコミカルな演技に客席は大笑いでした。

 

★Information
英国ロイヤル・オペラ・ハウス
シネマシーズン2017/18
バレエ「マノン」
振付:ケネス・マクミラン
音楽:ジュール・マスネ
指揮:マーティン・イエーツ
マノン:サラ・ラム
デ・グリュー:ワディム・ムンタギロフ
レスコー:平野亮一
レスコーの愛人:イツァール・メンディザバル
G.M.:ギャリー・エイヴィス

いつか来る"その日"に備えるスタディトレッキング

今朝、大阪を中心に関西圏で大きな地震があり、その被害が心配されるところですが、昨日、UPI Outdoor 鎌倉のスタディトレッキングに参加してきたばかりでそのタイミングに驚きました。

 

場所は三浦半島の前田川沿い。
日本に住んでいる以上、地震をはじめとする自然災害は避けることができません。
普通の生活が送れなくなってしまういざ、という日に備え、アウトドアの知恵を楽しく学びながら、オレンジのカンケンバッグに詰まったひみつ道具を駆使して、
・川の水を浄水
・燃料を確保
・ナイフを使って火おこし
・煮沸して安全な飲み水に
・沸騰させたお湯を使ってレトルトパスタを作る
と、周りにあるものを利用して、お昼ごはんを作って食べる、というものでした。

 

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着火可能なナイフを使い、火をおこすのに大苦戦。
こすって火花を出すコツがなかなかつかめず、あれこれアドバイスをもらい、手伝ってももらいで、必死にがんばってなんとか着火できました。

 

いつもなら、
・蛇口をひねって水をじゃーっとやかんへ。
・ガスコンロにかけて、火をつけて、待つこと数分。
・沸いたお湯を注ぐ
と10分もあればできること。
あって当たり前になっているインフラのありがたさを改めて感じます。

 

格闘してできあがったお昼ごはん。
レトルトのカルボナーラに、ウインナーにプチトマト、バジルを添えて。

 

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きらきらと美しい木漏れ日、川の流れに沿って吹いてくるひんやりした風、川のせせらぎ、鳥の鳴き声のBGMと、最高のロケーションもあって、とっても美味しかった!!

 

この日使わせていただいたキット一式、どの道具もすごくよかったですが、とくに浄水器のお手軽さは感動的でした。
ペットボトルに水を汲み、飲み口のところにくるくると取り付けて、別の容器にじゃーっと絞り出すだけ。
あとは煮沸すれば、完璧。
水は死活問題なので、これだけでも近いうちに手に入れたいと思っています。

美味しい猪肉を食べる会

友人を誘って、猪肉を食べる会へ。

 

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旨みがぎゅっと詰まった猪肉を、チャーシュー、焼売、ピザと、珍しい調理法でいただく。
野菜やチーズなども佐賀・嬉野産のもので、どれもこれも味が濃く、本当に美味しかった。

この猪肉、佐賀・嬉野の猟師さんがイノシシによる深刻な農業被害を減らすため、駆除目的で捕獲されたもの。
「美味しい猪肉」の背後にあるさまざまな問題を、猟師さんから直接、話をお聞きしながら。

 

被害を防ぐため、必要なことではあるけれど、相手も生き物。
命を奪うなら美味しく食べてあげたい、というシンプルな思いにはとても共感。
その思いを実現するのがなかなか難しく、いろいろなハードルがあることも全然知らなかった…。

三月大歌舞伎 昼の部 「男女道成寺」 3/21

夜の部に続いて、昼の部「男女道成寺」を幕見してきました。

 

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四世雀右衛門さんの七回忌追善狂言
一時期、歌舞伎に猛烈にハマっていた母に、
お伴して時々連れて行ってもらっていた歌舞伎座
初めて胸を撃ち抜かれた役者さんが、先代の雀右衛門さんでした。
なかでも八重垣姫と並んで、道成寺が今でも思い出せるほど衝撃の舞台だったので、すごく感慨深いです…。

 

友右衛門さんの明石坊による口上があってからの、雀右衛門さんと松緑さんによる道成寺
松緑さんの桜子、可愛かった…。
踊りは軽やかにテンポよく。
一方の雀右衛門さんはしっとりと。
ぐぐっと増した華やかさで、恋する女の性根を大事に踊っていらして、気持ちが見えるような、役者らしい踊り。
いい意味で対照的ですが、お互いに相手を見ながら息を合わせて丁寧に踊っていて、場を大事に思っているのが伝わってきて素敵でした。

 

歌昇さん、壱太郎さんはじめ、若手で固めた所化たちも贅沢な配役で、追善にふさわしい華やかなひと幕。

 

★Information
三月大歌舞伎
歌舞伎座
3/3(土)〜3/27(火)

 

昼の部
四世中村雀右衛門七回忌追善狂言
二、男女道成寺

 

白拍子花子:雀右衛門
白拍子桜子 実は狂言師左近:松緑
所化:歌昇、壱太郎、竹松、廣太郎、米吉、橋之助、男寅、福之助
明石坊:友右衛門

三月大歌舞伎 夜の部「於染久松色読販」「神田祭」3/18

三月大歌舞伎、夜の部の「於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)」「神田祭」を幕見してきました。

 

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二月に続いて、仁左玉コンビ♡

「於染久松色読販」は鶴屋南北の作品。
通称「お染の七役」と言い、お染をはじめ、女形が早替りで7役を演じ分けるのが目玉の芝居ですが、今回はそのうちの小梅莨屋の場と瓦町油屋の場の二場のみの上演です。
ドスの効いた低音で「おい、かかぁ」と呼ぶ仁左さんの喜兵衛に、「あいよ」とだるそうに応える玉三郎さんのお六。
無茶を承知の強請りの場面から、駕籠をかついではけるまで、二人の息ぴったりの悪党ぶりがたまりません。
剃刀を口にくわえてぎろりと睨む仁左さんの色悪も素敵ですが、玉三郎さんの愛嬌ある悪婆も魅力的。
最後の花道の七三での挨拶は、お二人ともに劇場内の四方八方を見渡して丁寧にされており、「仁左玉でがっつり組むのはこれで最後にするおつもりなのかな?」と思ってしまうほど。
担ぎ込まれた丁稚(吉太朗さん、名演!)を前にわちゃわちゃと、終わったばかりのオリンピックネタ「そだね〜」をねじ込んだりした、脇を固める油屋の人々の受ける芝居も最高で、あっという間の45分でした。

 

続く「神田祭」は清元の舞踊。
ひたすら美しいお二人のいちゃいちゃを、観てるだけで幸せ。

 

それぞれに美しくて、二人寄り添ったときにはさらに輝きが増す。
また芝居も舞踊も息ぴったり。
お互いにそんな相手役に恵まれて、老いてますます美しくなるお二人を目の当たりにできる喜びに、ひたすら浸った幸せな時間でした。

 

★Information
三月大歌舞伎
歌舞伎座
3/3(土)〜3/27(火)

 

夜の部

一、於染久松色読販
小梅莨屋の場
瓦町油屋の場

 

土手のお六:玉三郎
山家屋清兵衛:錦之助
髪結亀吉:坂東亀蔵
庵崎久作:橘三郎
油屋太郎七:彦三郎
鬼門の喜兵衛:仁左衛門

 

二、神田祭
鳶頭:仁左衛門
芸者:玉三郎