「杉本博司 ロスト・ヒューマン」展 at 東京都写真美術館
"都民の日"、入場無料だったこちらの展示へ足を運びました。
「杉本博司 ロスト・ヒューマン」。
東京都美術館のリニューアルオープン、そして総合開館20周年記念の企画展です。
「今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない」ではじまる、人類滅亡の33のシナリオを様々なモノを組み合わせてみせる展示。そして写真作品の新作「廃墟劇場」シリーズ、「仏の海」のインスタレーションによる構成。
どれも真剣な遊びに毒っ気が加わった、"滅びの美"を感じさせる展示になっていて、知的好奇心をそそられました。
今回、強く感じたのは、モノのもつ圧倒的な力でした。
それを感じたのはフロアをまるまる1階分使って構成されている〈今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない〉の展示。
廃材を使って廃墟のような空間を作り、そのなかにそれぞれのシナリオに関連するモノを組み合わせて展示されていました。
鑑賞者はそれぞれのシナリオが書かれた紙を手に空間を回るのですが、展示されているモノたちはどれもかつて使われていた痕跡や、これまで経験してきた時間の長さを感じさせる、独特の気配があるのです。
一つひとつのモノが発する物語の気配ももちろんですが、これらが組み合わさることでさらに醸し出す雰囲気や物語が重層的になって深みを増し、33のシナリオに「もしかしたら、本当にあり得る話かも…」という真実味、もっともらしさを与えていました。
続く下のフロアの展示は「廃墟劇場」。
アメリカ各地で使われなくなった映画館にスクリーンを設置しなおし、映画一本分を投影した光で長期露光し撮影した作品。
投影された映画の解説と、「枕草子」や「平家物語」「方丈記」など、日本の古典作品から採られた一説が引用されていて"諸行無常"感が漂います。
最後は京都の三十三間堂を埋め尽くす観音像を写した「仏の海」シリーズと水晶でできた五輪塔を組み合わせたインスタレーション。
全体を通して、末世の雰囲気、終末の予感と滅び、そして救済という壮大な流れを感じる展示でした。
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★Information
東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
杉本博司 ロスト・ヒューマン
9/3(土)〜11/13(日)