うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

Cinema:海辺のポーリーヌ

東京では先週末からはじまったエリック・ロメール監督特集「ロメールと女たち」。
そのなかから「海辺のポーリーヌ」(1983年、フランス)を見てきました。

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ある夏、ノルマンディの海辺でポーリーヌと従姉妹のマリオンが過ごした短いヴァカンスと、その間に生まれたさまざまな形の恋を描いています。

冒頭から、映画のヒロイン、15歳のポーリーヌと、彼女よりかなり大人の従姉妹マリオンの恋愛話がはじまって、その後、出てくる登場人物がみんなしゃべるしゃべる。
"amour"=愛、という単語を映画の中で何回聞いたことか! と思うほど、みんな、愛について語りまくります。

実は私にとって、これが初めてのロメール作品。
ロメール監督の作品って、勝手なイメージで、言葉少なで映像美で魅せるタイプなのかと思ってたら、ぜんぜん違いました…。
テンポよく会話の応酬があって、台詞劇の要素が強いのです。

突然燃え上がるような愛を待っているマリオン。
マリオンの古くからの男友達で、静かで長く続く愛を探しているピエール。
どんな女性でも来るもの拒まず、去るもの追わず、そのときどきで恋のかけひきを楽しむアンリ。
そんな3人の大人たちの間で繰り広げられる恋愛模様を見ながら、同じ年頃の男の子シルヴァンに惹かれるポーリーヌ。
登場人物それぞれの言葉にうなづいたり、首をかしげたり。
まるで自分もその場にいて、目の前で会話を聞いているかのような臨場感にあふれているので、恋について、愛について、結婚について…、「自分はどう思うか?」を映画を見ながら自然と考えていました。

また、台詞だけではなく、一場面ごとの絵作りから、部屋のインテリアや登場人物のファッション、音楽まで、すみずみにまでロメール監督のセンスのよさが溢れていて、とっても美しい空間の中で時間が流れていきます。

たとえば、ポーリーヌとマリオンの白いリネンのブラウスの着こなし。

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中段、左側の写真です。
色っぽくこなれた着こなしのマリオンと、さっぱりとしていてさわやかなポーリーヌ。
同じ白のブラウスでも、それぞれの年齢や個性の違いがはっきりと伝わってきます。

隣の写真、ポーリーヌとシルヴァンが海辺で話す場面も、若者らしい健康さに溢れていて素敵でした。

とってもキュートで愛おしい映画で、こんなヴァカンスが過ごしたい!


★Information
1983年、フランス