うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

シネマ歌舞伎「熊谷陣屋」

あけましておめでとうございます。
2018年のエンタメ初めはこちらから。

 

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前の歌舞伎座のさよなら公演、最後の月に演じられた芝居を映画化したものです。

 

吉右衛門さんの熊谷を筆頭に、藤十郎さんの相模、魁春さんの藤の局、梅玉さんの義経、そして富十郎さんの弥陀六! と超・豪華な配役。

8年前の舞台なんですが、義太夫も含めてこってり濃厚。
みんな情がしたたりおちそうなほど、じゅるじゅる。
空気感もテンポも、10年も経てばかなり変わるものですね。
これに比べると、今の時代物の芝居は随分あっさりとしています。

 

なんといってもやはり、吉右衛門さんの熊谷が素晴らしいです。
歌舞伎らしい美しい型、絵になる姿と、リアルなお芝居がうまく溶け合って、時代物のひとつの極み。
このころは芸に脂ののっている時期だったようで、全編にわたって気迫にみなぎる演技が、我が子を犠牲にした哀しみを押し隠して忠義を尽くそうとする熊谷の境遇と重なって、すごい迫力でした。
「十六年はひと昔。夢だ、夢だ。」と泣く姿が哀しくて哀しくて…。

 

「熊谷陣屋」は一昨年、芝翫さんが襲名公演でなさったときの型が新鮮で、印象に残っていたのですが、従来のこの型はお芝居らしいこってりさがあって、やはりよいですね。

 

弥陀六役で富十郎さんのお芝居が観られたのも、嬉しかったです。
からっと明るい富十郎さんの舞台姿、軽やかな踊りとともにとっても好きでした。

 

★Information
シネマ歌舞伎「熊谷陣屋」
2010年4月 歌舞伎座

熊谷直実:中村吉右衛門
白毫弥陀六:中村富十郎
藤の方:中村魁春
堤軍次:中村歌昇(現・又五郎)
源義経:中村梅玉
相模:坂田藤十郎