壽新春大歌舞伎 昼の部「通し狂言 雙生隅田川」 at 新橋演舞場 1/14
市川右近 改め 三代目 市川右團次 襲名披露
二代目 市川右近 初舞台
の記念公演。
昼の部「通し狂言 雙生隅田川(ふたごすみだがわ)」を、1/14(土)に観劇してきました。
作者は近松門左衛門。
「隅田川」など、能の狂女ものの要素や梅若伝説などを取り込んだ、天狗が暗躍するお家乗っ取りのお話。
三代目猿之助さん(現・猿翁)が復活させた狂言で、今回で4回目の上演になるそうです。
襲名披露のおめでたい公演、そして一度観てみたいと思っていた演目だったので、チケット代を奮発しました!
(←あくまでも自分比。いつも歌舞伎座の幕見ばかりなので…。)
二階の右袖。
上手の端は見切れますが、花道や宙乗りの軌道はよく見える、よいお席でした。
右團次さん、猿之助さん、右近くん、三人での宙乗り、早変わり、鯉つかみ、本水の中での大立ち回りなど、スペクタクルな演出が盛り沢山。
まず新・右團次さん。
猿島惣太のちに七郎天狗と奴軍介の二役。
猿島惣太はもともと、公家の吉田家に仕える家老・淡路前司兼成(男女蔵さん)の息子で、自身も父同様に奉公していたのですが、遊女・唐糸(笑也さん)に惚れ込み、彼女を身請けするために家のお金を横領してしまいます。
横領してしまったお金と同額を貯め、また元の立場に戻りたいという願いを胸に、今は人買いにまで身を落とし、あばら家に妻となった唐糸と住んでいます。
買い付けた子どもを折檻して死なせてしまい、それが主君の息子・梅若丸だったことを知ると腹をかっ切って自害。
天狗にさらわれ行方不明になっている梅若丸の双子の片割れ、松若丸を見つけると言い、天狗に生まれ変わって空を飛んでいきます。
右團次さんの男らしい雰囲気が、猿島惣太の役にぴったり。
あばら家のあちこちに貯め込んだ黄金の小判に埋もれながら、色に溺れて主君に背いたこと、人買いという仕事に身を染めていたこと、主君の子息・梅若丸を誤って殺してしまったことなど、さまざまを悔いながら自害する場面は、絵的にも美しく、右團次さん渾身の演技が迫力満点でとても見応えがありました。
もうひと役、奴軍介は、梅若丸がお家乗っ取りを狙う景逸(猿弥さん)にそそのかされて、大切な鯉魚の軸に目を書き入れてしまったために、絵から抜け出た鯉を捕まえる泳ぎの達人。
冬ですが、本水を使った鯉つかみと、その後の景逸とその家臣との大立ち回り。
三代目猿之助さんの下で磨いたケレンの演技が存分に生かされていて、大団円にふさわしい迫力満点の見せ場でした。
そして、ご子息の二代目右近くん。
吉田家の跡取り、双子の梅若丸と松若丸を早変わりで演じます。
6歳だそうですが、とてもその年齢とは思えないほどしっかりしています。
台詞もしっかり聞こえますし、演技もばっちり。
ふっくらした可愛らしい顔立ちもあって、右近くんが何かするたび、客席はめろめろ♡
早くも「将来が楽しみね〜」の声があちこちから聞こえてきていました。
猿之助さんは、吉田家の奥方、班女御前でご出演。
夫を亡くし、梅若丸と松若丸、2人の息子もいなくなってしまい、正気を失ってさまよう姿がとても痛々しく、抑えた動きや台詞で母の哀しみを美しく表現されていました。
猿之助さんは何をやってもほれぼれするほど、魅せてくれますね。
今回は役柄もあって控えめでしたが、母を演じる猿之助さん、素敵でした。
海老蔵さんは吉田家の家臣のひとり、県権正武国で、出番は少ないながらも美しい姿で舞台に華を添えていました。
中車さんの大江匡房は公家姿が立派。
衣冠束帯姿って、何割増しかで身にまとった人をかっこよく見せてくれるように思います。
流石の存在感で、芝居の要所要所をきりっと締めていらっしゃったように感じました。
芝居のところどころに「高嶋屋」や三升の紋など、襲名にちなんだものが散りばめられていて、右團次という名前とともに新しい道を歩きはじめられるのだなぁとしみじみ。
猿之助さん、海老蔵さんはじめ、みなさんが新・右團次さんを全面的にサポートされていたのが印象的でした。
梨園の出ではなく、ここまでくるのには大変な努力とご苦労だったと思いますが、ご襲名おめでとうございます!!
これからの右團次さん、そして右近くんのご活躍が楽しみです。
★Information
壽新春大歌舞伎
昼の部
通し狂言 雙生隅田川
1/3(火)〜1/27(金)
【配役】
猿島惣太 後に七郎天狗
奴軍介…市川右團次
班女御前…市川猿之助
淡路前司兼成…市川男女蔵
小布施主税…中村米吉
次郎坊天狗…大谷廣松
梅若丸/松若丸…市川右近
局 長尾…市川笑三郎
勘解由兵衛景逸…市川猿弥
惣太女房 唐糸…市川笑也
吉田少将行房…市川門之助
県権正武国…市川海老蔵