うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

Cinema:ミルピエ〜パリ・オペラ座に挑んだ男〜

「ミルピエ〜パリ・オペラ座に挑んだ男〜」を鑑賞。

20年近く芸術監督を務めたブリジット・ルフェーヴルの後任として、史上最年少でパリ・オペラ座の芸術監督に就任した振付家のバンジャマン・ミルピエ。
芸術監督として初めて手がけた新作「クリア、ラウド、ブライト、フォワード」の初日の幕が開くまでの40日間を追ったドキュメンタリー。

 

f:id:utakatax:20161228000020j:image


ある優れた振付家がひとつの作品を生み出すまでの舞台裏が見られるとともに、若きリーダーとして伝統的な大組織を変革していく様子を追っていて、チームでのものづくり、組織づくり、部下のマネジメントなど、働く人目線で見てもいろんな示唆に富んだ内容だった。

ダンサーに独立したアーティストとして、自らのキャリアの構築やセルフプロデュースに貪欲であるよう伝えたり、怪我でキャリアを棒にふることのないよう医療制度を充実させ、休養や休暇をしっかりとらせるなど、自らの信念をもとに保守的な体制のパリ・オペラ座をばんばん変えていこうとするミルピエ。
エトワールを頂点とする階級制度を批判し、普段ならコール・ド・バレエ(群舞)でしか踊れない下の階級のダンサーや、黒人とのハーフのダンサーに主役を踊らせるなど、これまでの伝統を否定する改革に反発も強かったのか、裏方たちのストライキで幕開けの二公演が中止になるなどトラブルも…。

"常に新しい美が見たい"と、自ら音楽をかけて踊りながら振付を考えるなど、優れた芸術家で、作品の動画を特設サイトにアップして宣伝し、寄付を集めるなどビジネス感覚も持ち合わせているけど、感覚が新しすぎて、パリ・オペラ座みたいに長く培ってきたものがある巨大な組織は彼の個性に合わなくて見るからに窮屈そう。
そしてやっぱり2年の任期で就任したにも関わらず、1年で退任してしまっている。

 

映像はスローモーションやアップなどを効果的に使い、ダンスシーンがスタイリッシュでかっこよく、そして美しかった!!

振付家としてダンサーたちと楽しそうに作品を作り上げている彼の姿がとても印象的だったので、今から2017年パリ・オペラ座来日公演で彼の作品「ダフニスとクロエ」を観るのが楽しみ。

★Information

「ミルピエ〜パリ・オペラ座に挑んだ男〜」

監督:ティエリー・デメジエール/アルバン・トゥルレー

2015年、フランス