Musee:浮世絵の戦争画ー国芳・芳年・清親 at 太田記念美術館
今年は太平洋戦争終結後70年という節目の年にあたります。
※残念ながら、今日が最終日です。
浮世絵師たちが戦争をどう描いてきたのかを、時代ごとの特徴や浮世絵師それぞれの持ち味などから考察する展覧会です。
浮世絵で戦争画が描かれるようになったのは江戸中期。
ここに描かれた戦争は、人物たちは鎧兜に身を包んで馬に乗り、白刃閃き、弓矢が飛び交う中、基本的に一対一(武器が刀ですからね)で戦う世界です。
その後、幕末、ペリーの浦賀来航をきっかけに、諸外国が日本にやってきて開国を迫り、日本国内が、江戸幕府と天皇を中心とした新しい政治体制を求める薩長連合との対立で激しく揺れるようになると、過去の出来事になぞらえて、リアルに起きた戦争を暗に風刺するような浮世絵が描かれるようになります。
※江戸幕府は実際にあった事件を劇や絵などの娯楽作品に取り上げるのを禁止していました。
この頃描かれた絵は、300年ほど続いた、戦争のない平和な時代が終わりを告げ、急に血なまぐさくなってきた世情への不安感が強く感じられるものが多かったです。
それまでは刀や鎧兜の世界だったのに、鉄砲や大砲が登場し、炸裂する火花、燃え上がる炎と立ち上がる黒煙など、一気に画面に描かれる暴力性、破壊力が増しています。
絵を見ていて印象的なのは、黒々とした海原や戦地での夜など、暗い画面の中、大砲や鉄砲などが爆発するときの閃光や、赤々と燃え上がる炎が鮮烈に描かれた絵が多いこと。
闇と光のコントラスト。
これがかっこよく、また美しくもあるのですが、同時に何人もの人間の命を簡単に奪ってしまう凄まじい暴力が描かれてもいるのです。
しかし、絵師たちも実際に戦場に足を運んで描いているわけではなく、想像力を駆使して描いているので、どうしても"絵になる""美しい"画面を描きがち。
事実をありのままに伝える、ルポルタージュが目的ではないので、当然といえば当然ですよね。
※中には想像力がぶっとび過ぎて、戦艦同士が大砲の撃ち合いをしている水面下で、潜水服を着た兵士がフェンシングのように剣と斧をそれぞれ振りかざして戦っている、という海戦の絵がありました…。
浮世絵で戦争画が描かれたのは日露まで。
その後は浮世絵そのものが写真など、新しいメディアにその役割をとって代わられます。
"戦争"をテーマに描いても、やはり絵師の個性は出るもので、芳年はホモソーシャルな雰囲気が漂っていたり、流れている血を描くなど死の匂いを濃厚に感じさせる絵、清親はシルエットを描くなど、独特のノスタルジーを感じさせる叙情的な絵と、持ち味全開。
点数はそこまで多くなかったですが、浮世絵の戦争画を見るという切り口がこれまでにないアプローチで面白い展覧会でした。
そのうち手に入れたいと思っている小林清親の画集。
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★Information
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1-10-10
Tel 03-3403-0880
7/1(水)〜7/26(日)