うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

人に言われて気づくこと

自分ではそうと自覚していなくても、人から指摘されて気づくことってありませんか?

今日、ふと、そんな気づきがありました。

 

姉や母から見ると、私は"花柄好き"という印象があるらしく、2年前の誕生日にプレゼントしてくれたのはローラ・アシュレイの花柄のガマ口ポーチ。

 

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もらったときは「たしかに柄物は大好きだけど、とくに花柄に思い入れがあるわけではないんけどな…」と思いつつ、好きなタイプの柄だったので毎日嬉しく使わせてもらっていました。

 

が、喫茶店やカフェなどで「素敵だなぁ」と思って写真に撮っていた器をまとめて見返していたら、「たしかに花柄好きなのかも!?」と、いまさらながら気づきました。

 

まずはエインズレイのコテージガーデン。

 

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同じくエインズレイ

ペンブロックというシリーズで、日本の伊万里焼にインスピレーションを受けて作られた柄だそう。

 

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そして、リチャード・ジノリのグランデューカ。

 

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オーストリアの女帝マリア・テレジアのために作られたシリーズとのこと。

とても東洋的な雰囲気があります。

 

こう見てくると、繊細さがありながらリアルすぎず、ほどよく図像化された大きめの花柄で、どこか東洋的な雰囲気のあるものに惹かれるよう。

あらためて振り返ってみると、人からの指摘って本人以上に核心をついていることがありますね…。

大仙厓展ー禅の心、ここに集う at 出光美術館

出光美術館開館50周年の記念展。

まだまだ続いています。

 

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大仙厓展は笑いとユーモアあふれる、ゆるかわな絵で知られる禅僧・仙厓の絵が大集合。
出光美術館、初代館長・出光佐三さんの初めてのコレクションは、メインビジュアルに使われている「指月布袋図」(なんと19歳の時に購入)だったそう。
彼の最後のコレクション品になった「双鶴画賛」はじめ、堪忍柳や座禅蛙、謎多き禅画としてあまりにも有名な○△◻︎まで、興味深い作品ぞろいでした。

 

禅では悟りを表すとされる円相に「これくふて ちゃのめ(これ食ふて茶飲め)」という賛が添えられていたり、かと思えば、強風に耐える柳の絵に「堪忍」の文字と、「気に入らぬ風もあらふに柳かな」という歌。

「ふぁ〜っ」とあくびをしながら背伸びする布袋さまの絵など、厳しい修行を積んだからこそ言えるような奥深い絵や言葉の数々。

 

頼まれればどんな人にでも絵を描いてあげていて、あまりの人気っぷりで紙がたまっていくばかりなので、一時は「もう描かない」と絶筆宣言をしたほどだとか。

それほど人々の心をつかむのがわかる、あたたかく、やさしく、奥深い作品たちでした。


仙厓の人となりをしのばせる愛蔵の品なども展示されていたのですが、絵を本格的に描きはじめたのは住職を退いてからで、乞われるままに絵や書を描いたり、友達とあちこち旅をしたり、なんだかとっても楽しそうな老後を送っていたことがうかがえました。
こんなお坊さん&おじいちゃんが身近にいたら、いいだろうなぁ。
みんなに愛され、慕われていたのも頷けます。

 

★Information

出光美術館

〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル

出光美術館

 

大仙厓展ー禅の心、ここに集う

10/1(土)〜11/13(日)

念願のニワコヤ映画祭

"映画を観て、映画にまつわるごはんをみんなで食べる"がコンセプト。
移動映画館 Kino Iglu × 仙川のカフェ ニワコヤ × 山フーズのコラボによるイベント、ニワコヤ映画祭2016に参加してきました。

 

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いつも終わってしまった後に気づいて悔しい思いをしていて、「今年こそは!」が叶って嬉しい♪
4本ある映画のうち、観たのはエミール・クストリッツァ監督の『黒猫・白猫』(1998年、ユーゴスラビア)。

エミール・クストリッツァ監督の作品ははじめて。

前作、カンヌ映画祭パルムドールを受賞した「アンダーグラウンド」はメッセージ性の高い作品だったため、あれこれ論争に巻き込まれて疲弊してしまい、「とにかく底抜けに陽気なコメディを!」と作ったのが『黒猫・白猫』だそう。

 

冒頭からとにかくハイテンションで「考えたらダメだ〜」という笑いがてんこもり。

出てくるキャラ出てくるキャラ、みな一癖も二癖もあって胡散臭いヤツばかり。

ノンストップで最後までだだだ〜っと駆け抜けていきます。

エンドクレジットまで、ただただ面白かった!!


映画の後は、みんなでテーブルを囲んで映画にちなんだごはんをいただきます。

今年は山フーズさんプロデュースのお料理で、前菜からデザートまで、見た目も味もとってもステキなお料理でした。


会場になっているニワコヤさんの空間や店主さんの作り出す雰囲気も素敵で。
好きなものでなんとなくつながって、同じ体験を共有した人たちと、食卓を囲みながらおしゃべりするって、こんなに楽しいものなんだなぁと。

また来年も予定があえば、参加してみたいです。

 

 

 

ニワコヤのオーナーさんおすすめの映画。

 

 

 

★Information

niwa-coya

東京都調布市若葉町1-28-28

niwa-coya web 

 

Kino Iglu

Kino Iglu

 

笑いを描いた能〜「三笑」

国立能楽堂 十一月 普及公演を観てきました。

狂言 二人袴(大蔵流)、能 三笑(観世流)です。

 

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※毎月美しい国能楽堂のチラシですが、今月はとくに素敵です。

紅葉柄なんですが、もみじ葉が"いかにも!"な鮮やかな紅色ではなく緑や青からのグラデーションになっていて、地紋の青海波との取り合わせも粋。

 

能楽の普及を目的とした公演なので、まずは解説から。

この日の解説はリンボウ先生、こと林望さん。

一時期はよくテレビで拝見していましたが、最近はほとんど出ていらっしゃらないですよね。

なにをされているのだろうと気になって調べてみたら、「平家物語」の現代語訳に取り組まれていたり、この日のような古典をテーマにした講演などをメインにされているようです。

能は研究したり鑑賞したりするだけでなく、観世流を習われているのだとか。

 

能「三笑」の元ネタになった漢詩などの作品を紹介しながら、詞章に描かれた世界やイメージを解説されたのですが、これがなかなか難しく…。

和漢朗詠集」や「白詩文集」など、日本の古典文学に親しんでいないと知らない固有名詞がたくさん出てきて、研究的な目線での解説。

初心者向けとしてはかなりレベルが高すぎる内容だったと思いました。

 

狂言の「二人袴」は、親子関係が描かれたお話。
幼さの残る頼りない息子が心配で、聟入りの挨拶についてきた父親
息子を送り届けて帰ろうとしたら、「ぜひ二人一緒に挨拶を」と言われるが、正装に必要な袴は一つしか持ってきていない…。


苦肉の策でなんとかその場を乗り切ろうと、協力しあう親子の姿が息ぴったりで、とても面白かったです。

どんなに大きくなっても子どもが心配でついあれこれ世話を焼いてしまう、というのは時代を経ても変わらぬ親心なんでしょうね。


能の「三笑」は、慧遠禅師(仏教)、陶淵明(儒教)、陸修静(道教)と、中国の三賢人が俗世を離れて仙境に遊ぶ、水墨画のような世界。

 

"虎渓三笑"の故事がモチーフになった作品です。

慧遠禅師は中国・廬山に籠り、修行三昧の日々を送ること三十余年。

「決してこの地を出ない」という誓いを立てています。

ある日、古い友人である陶淵明と陸修静が慧遠禅師を訪ねてやってきます。

久しぶりの再会を喜び、思う存分語らい、遊ぶ三人。

そろそろ帰らなければと帰路につく陶淵明と陸修静を見送っていった慧遠禅師。

気がつけば境界にある橋を渡って、随分遠くまで来てしまっています。

慧遠禅師が長年の禁を破ったことに気がつき、三人は顔を見合わせて「わっはっはっ」と大笑いするのでした。

 

季節は晩秋。

急峻な山の中、大きな滝がどうと音を立てながら落ちています。

枯野の中、霜焼けで赤く色づいた白菊だけが彩りを添えている、というモノクロームの世界。

そんな浮世を離れた幽玄の景色の中、お酒を飲んで、昔話に花を咲かせ、舞を舞ったりして楽しむ、仲のよいおじいちゃん三人組。

格調高い作品なのですが、三人で足並みを揃えて舞う場面など、そこはかとなくユーモラスな雰囲気が漂います。

数ある能の中で唯一、笑いがテーマになっている作品だそうで、なんともいえない独特の空気感に眠気を誘われて、ついうとうと。

すごく気持ちのよい睡眠タイムになってしまいました…。

三人がどっと大笑いする、という幕切れは、「能の笑いはそう表現するのか!?」と軽い衝撃が。

事前に知っていないと、あれは笑っている場面には見えません…。

三人の間に流れるふんわりした空気感がよく、老いたらこうありたいものだなぁと思いました。

 

★Information
国立能楽堂
国立能楽堂 | 独立行政法人 日本芸術文化振興会

国立能楽堂十一公演 普及公演
解説・能楽あんない 仙境への憧憬ー能「三笑」をめぐって
林望(作家)

狂言大蔵流】 二人袴
シテ/聟 大蔵教義
アド/舅 善竹十郎

アド/太郎冠者 大蔵基誠

アド/親 大蔵吉次郎

能【観世流】 三笑
シテ/慧遠禅師 松山隆雄
ツレ/陶淵明 会田昇

ツレ/陸修静 梅若紀彰

子方/舞童 松山絢美

アイ/廬山の者 大蔵彌太郎

笛 一噌幸弘

小鼓 幸正昭

大鼓 石井保彦

太鼓 小寺佐七

後見 角当行雄、西村高夫、松山隆之

地謡 安藤貴康、馬場正基、谷本健吾、岡田麗史、長山桂三、浅田文義、浅見慈一、小早川修

明日館レストラン・秋

ずっと行ってみたいと思っていた明日館レストラン。

東京・池袋にあるフランク・ロイド・ライトと弟子の遠藤新の設計による建物、自由学園明日館。

かつて学校の食堂として使われていた部屋がこの日限りのレストランになるというイベントです。

春夏秋冬、年に4回開催されているそうです。

抽選に一度外れたのですが、なんともラッキーなことにキャンセルされた方の分がまわってきて、友達と一緒に参加してきました。

 

かつて学校の食堂だった部屋でいただくランチ。

 

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お料理はコルドンブルーが担当しているとのことで、前菜、メイン、デザートと食後の飲み物、とコース仕立ての本格的なもの。

 

前菜

 

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フォカッチャにグリーンサラダ、キッシュ、タコのマリネ、豚肉のテリーヌ。

ワインなどのアルコールやソフトドリンクなどの飲み物は別料金でオーダーできました。

 

メインディッシュ

 

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メインは3種類の中から申し込み時に選べたので、牛ホホ肉とポルチーニのラザニアに。

友達は帆立貝とキノコのリゾット。

 

そして、デザートと食後の飲み物。

 

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チョコレートとバナナのムース。

飲み物はコーヒーか紅茶が選べます。

フランク・ロイド・ライトによるデザインのカップ&ソーサーなのが素敵な演出。

 

美味しいお料理に加えて、空間はもちろん、お皿やテーブルの上のお花などがさりげないけれどとっても素敵で、日常を忘れる贅沢な時間が過ごせました。

修復・保存に莫大な費用がかかるからと、貴重な古い建物がほとんど取り壊されてしまうなか、奇跡的に残った明日館。
結婚式会場やイベント場所として貸し出したり、今回のようなレストランや月に一度の夜間見学など、いろんなイベントを仕掛けて活用している取り組みを、ほかのところでも応用できたりしないのかな?、と思ったりします。

Livre:原民喜『夏の花・心願の国』(新潮文庫、1970年)

長患いの末、終戦の前年に亡くなった妻との日々を綴った作品群、被爆直後の広島の街と人々の様子を記録した『夏の花』三部作、そして『心願の国』や『鎮魂歌』など亡くなる直前まで執筆していた作品を収めた一冊。
編集と解説を担当しているのは大江健三郎

 

 

夏の花・心願の国 (新潮文庫)

夏の花・心願の国 (新潮文庫)

 

 
どの作品にも"終末の予感"、何かが滅びに向かっていくことへの怯えや震え、そして諦めが滲んでいて、静謐でひんやりとした世界が広がっています。

 

彼の作品を読んでいると、ぺろんとビニールのようにめくれる海面、壁や皮膚に開いた穴からぞろぞろと這い出してくるアリの群れなど、ダリの絵に展開されるイメージが浮かんできます。


この世界はひと皮剥くと、奥にはとんでもないものが潜んでいるのかもしれない。
原子爆弾の閃光は、その世界の皮を剥いでしまった…。

それにしても、描かれている世界は繊細ですが、原民喜の文章は本当に美しく、そして力強いです。

僕は堪えよ、堪えてゆくことばかりに堪えよ。僕を引裂くすべてのものに、身の毛のよ立つものに、死の叫びに堪えよ。それからもっともっと堪えてゆけよ、フラフラの病いに、飢えのうめきに、魔のごとく忍びよる霧に、涙をそそのかすすべての優しげな予感に、すべての還って来ない幻たちに……。僕は堪えよ、堪えてゆくことばかりに堪えよ、最後まで堪えよ、身と自らを引裂く錯乱に、骨身を突刺す寂寥に、まさに死のごとき消滅感にも……。それからもっともっと堪えてゆけよ、一つの瞬間のなかに閃く永遠のイメージにも、雲のかなたの美しい嘆きにも……。

原民喜「鎮魂歌」より

通し狂言 仮名手本忠臣蔵【第二部】 at 国立劇場

文化の日
三ヶ月にわたる「仮名手本忠臣蔵」の完全通し上演の第二部を鑑賞してきました。

 

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11月の第二部は、浄瑠璃「道行旅路の花聟」から七段目「祇園一力茶屋の場」まで。

五、六、七段目と今でもよくかかる人気の場面です。

色に耽って主君の大事の場に居合わせなかったことを悔いながら、「いつかはご恩返しを」と心に刻み、恋人である腰元おかるの故郷に身を寄せる早野勘平。
おかる一家を巻き込んで勘平に降りかかる悲劇と、祇園で遊興三昧する大星由良之助が明かす復讐の本心。

先月のゆったりと重々しい雰囲気漂う武士の世界から、農村や遊郭など庶民の世界になって、物語はぐっとくだけて親しみやすい雰囲気に。
菊五郎さんの勘平と吉右衛門さんの由良之助。
それぞれニンにあった持ち役で、素晴らしい舞台でした。


とくに五段目の「二つ玉の場」は様式美と写実的なところが溶け合って、菊五郎さんの色気あふれる巧みな芝居が面白く、ひとときも目が離せませんでした。

台詞は少ないのですが、型にそった動きを見ているだけで勘平の心の内が痛いほど伝わってきます。
またこの場面では、人を殺して金を奪う、松緑さんの斧定九郎が人形のように美しくて、ぞくぞくする雰囲気たっぷりで、まさに"悪の華"。

出番は短かったのですが、とても心に残りました。

幕開けの所作事、錦之助さんの勘平と菊之助さんの華のある絵のように美しいカップル、東蔵さんのおかやの人間味溢れる愛嬌たっぷりな芝居、雀右衛門さんの遊女になってからのおかるの美しさと勘平を思う一途な心など、今回も見どころたっぷり。
来月はいよいよ討ち入りです。

 

★Information
国立劇場開場50周年記念
通し狂言 仮名手本忠臣蔵【第二部】
11/2(水)〜11/26(土)

四幕五場

浄瑠璃 道行旅路の花聟 清元連中

五段目 山崎街道鉄砲渡しの場

            同 二つ玉の場

六段目 与市兵衛内勘平腹切の場

七段目 祇園一力茶屋の場

 

【主な配役】

早野勘平(道行旅路の花聟)…中村錦之助

鷺坂伴内(道行旅路の花聟)…坂東亀三郎

おかる(道行旅路の花聟、六段目)…尾上菊之助

早野勘平(五段目、六段目)…尾上菊五郎

斧定九郎…尾上松緑

千崎弥五郎…河原崎権十郎

判人源六…市川團蔵

与市兵衛女房おかや…中村東蔵

一文字屋お才…中村魁春

大星由良之助…中村吉右衛門

寺岡平右衛門…中村又五郎

斧九太夫…嵐橘三郎

大星力弥…中村種之助

遊女おかる…中村雀右衛門