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うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

Cinema:サタジット・レイ監督作品二本立て

早稲田松竹でインドの映画監督、サタジット・レイ作品「ビッグ・シティ」と「チャルラータ」の二本立てを観ました。

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どちらも舞台はインドのカルカッタ(現コルカタ)。
「ビッグ・シティ」は1953年。
病気の老いた父と母、妹に、小さな子どもを抱える夫婦が主人公。
まだ女性が外で働くなんて考えられなかった時代。
夫の稼ぎだけで切り盛りするのが難しくなってきて(お父さんが欲しがるメガネも買ってあげられないほど!)、妻のアラチは家計を助けるため、高級住宅街を回って奥様向けに編み機を販売するセールスレディとして働きはじめます。

義父は「嫁を働きに出すなんてみっともない」と怒って息子と口を聞かなくなり、夫婦の一人息子は「ママがいない」と寂しがり…。
アラチ自身は同僚の女性からもらった口紅やサングラスでおしゃれをするようになるなど、それまで家の中にいた女性が働きに出ることで、一家に起こる変化を描いています。

終始ちょっとぼんやりしていて頼りにならない夫ですが、ラストの場面で妻に最大級の愛情とやさしさを見せます。
大変な境地になっても、お互いを思いやれる夫婦の姿にときめきました。

「妻であり母である女性が外に出て働くこと」という現代でも十分通じるテーマを描いていることもさることながら、映像がとてもモダンでスタイリッシュなので、今観てもとても面白い映画でした。
映像のかっこよさは、映画のタイトルどおり、高層ビルが立ち並ぶ大都会、カルカッタが舞台になっているのも一役買っているかもしれません。

もうひとつの作品、「チャルラータ」はさらにさかのぼって1880年。
新聞を発行する出版社を経営する裕福な夫の庇護のもと、何不自由なく、でもとっても暇な毎日を送る若くて美しい妻チャルラータ。
そこに居候としてやってきた夫の従兄弟に淡い恋心を抱く…という話。

こちらは突然の雷雨や木漏れ日、水の煌めきなど、自然が主人公の心境を代弁するように使われていて、とても美しい作品。

なんとか従兄弟の気を引きたくて、彼の一挙手一投足にいらいらしたり、うきうきしたり。
彼と仲良くしようとしている義理の妹に嫉妬して、冷たくあたったり。
チャルラータのめまぐるしく変わる心模様の描き方がものすごくリアル。

どちらも家族や夫婦の関係や日々の暮らしという身近なテーマを描いているのですが、それぞれの登場人物の心の機微を美しい映像と丁寧な演出ですくいとっていて、日常生活ほどドラマティックなものはない、と感じさせてくれる映画でした。

それにしても、どちらの映画にも主演している女優さんの美しく魅力的なこと!
サリーを着た姿が本当にきれいで、まるで女神のよう。
そして演技も素晴らしいのです。
今回上映された作品二枚のポスターだけでも、まったく違う顔を見せていて、はっとさせられます。

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オレンジ色のポスターは「ビッグ・シティ」。
同僚の女性に口紅を塗ってもらっている場面です。
「こんな派手なこと、してもいいのかしら?」ととまどいながらも、口紅に憧れる気持ちを抑えきれない、とても印象的なワンシーン。

ピンク色のポスターは「チャルラータ」。
外に出ることができず、ずっと家の中で過ごす彼女の楽しみは、双眼鏡を覗いて外の様子を眺めること。
双眼鏡を手に、少し険しい顔をしているチャルラータです。
どこにも気持ちのもっていきようがない、満たされない虚しさが滲んだような表情です。

健気に働く主婦↔︎何不自由ない優雅な若婦人
庶民↔︎身分が高く経済的にも恵まれている人
小さな狭い家↔︎豪華な大邸宅
と、身分も立場も対照的なヒロインと物語で、比較する楽しみもある魅力的な二本立て。

サタジット・レイ監督の他の作品も観てみたくなりました!

★Information
ビッグ・シティ
監督:サタジット・レイ
(1963年、インド)

チャルラータ
監督:サタジット・レイ
(1964年、インド)