うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

Musee:杉本博司 趣味と芸術ー味占郷/今昔三部作 at 千葉市美術館

千葉市美術館の開館20周年を記念した特別展として開催されている、アーティスト杉本博司の2つの展覧会を見てきました。
なんでも、開館記念の展覧会が杉本博司の写真展だったという縁が、この展覧会につながったとか。
一枚のチケットで趣向の異なる2つの展覧会を楽しめる、嬉しい企画です。

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まず、「今昔三部作」。
海景、劇場、ジオラマ、杉本博司の写真を代表する3つのシリーズの、最も古い作品から最新作までが展示されています。
杉本博司自身の言葉を借りれば、「昔の名前でやってます」という展示。

どちらの展覧会も写真撮影OKだったので、カメラで写真作品を撮影する、という入れ子のような行為を楽しみながら鑑賞しました。

海景シリーズ。

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いつまでも見つめていたい、静かな美しさをたたえた海。

シリーズ中、一番古いこの一枚がとても好き。
カリブ海、ジャマイカ」(1980年)

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劇場シリーズが続きます。
一番気に入ったのは、こちら。
アバロン・シアター、カタリーナ島」(1993年)

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スクリーンの上の飾り物がとても素敵。
美の女神ヴィーナスもいます。

最後はジオラマシリーズ。
最新作の雨林がよかった…。
「オリンピック雨林」(2012年)

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どの作品もやはりオリジナルプリントで見ると、本当に美しく、画面の中に吸い込まれていってしまいそうな神秘的な世界でした。

そして、「趣味と芸術ー味占郷」。
女性誌『婦人画報』で連載されていたという割烹 味占郷で、毎月お客様を迎えるためにしつらえていた床の間を再現した展示です。
どれもこれも、素晴らしい品ばかりで、また組み合わせの妙がたまりません。

どの床の間も本当に素敵だったのですが、その中から私的ベスト3をご紹介します。

ゲストは狂言師野村萬斎、裕基親子。
東西東西

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鎌倉時代の舞楽図下絵の軸装と、古墳時代の硝子玉を根来経箱(室町時代)に入れたもの。
「瑠璃の浄土」と名前が付けられていて、玉手箱をイメージしているそうです。
下からライトが当たって、硝子玉からこぼれる青い光が神秘的な美しさ。
舞楽図の下絵は、ほわ〜んと力の抜けたゆるさが魅力的でした。

こちらはゲストが中村獅童
時代という嵐

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中村獅童が出演した、クリントイーストウッド監督の映画「硫黄島からの手紙」にちなんで、硫黄島の地図の軸装、および米兵が硫黄島から持ち帰り保管していた栗林中将司令官の洞窟から発見された遺留品です。
こういうものってどこから手に入れるの?と不思議なのですが、杉本博司氏は昔写真活動と並行してアメリカで古物商を営んでいたので、そういったつてで手に入るんでしょうね。

ラストの床の間。
ゲストは日本文学研究者のロバート・キャンベルとアーティストの束芋

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大江千里の「月見れば千々にものこそかなしけれ 我が身ひとつの秋にはあらねど」の和歌がしたためられた掛け軸に、月を思わせる硝子玉。

この回の割烹の料理は月見うどん。
尾形乾山の紅葉柄の器に盛られて供されたそう。
なんて贅沢な月見うどんなんでしょう!
その乾山の器も展示されていました。

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杉本博司の美術に関する膨大な知識に基づく、おもてなしの心と遊び心が楽しめる、面白い展示でした。

あの白洲正子さんが所有されていた、平安時代の十一面観音立像もありましたよ!

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せっかく千葉まで来たからと、千葉市美術館の公式サイトで紹介されていた、千葉PARCO近くにある喫茶 呂久呂でお茶を。

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ブレンドコーヒーと花ゆずのパウンドケーキ。
すみずみまでセンスの良さが感じられる、素敵な喫茶店でした。


★Information
千葉市美術館
千葉県中央区中央3-10-8
Tel  043-221-2311

杉本博司 趣味と芸術ー味占郷/今昔三部作
10/28(水)〜12/23(水・祝)