Musee:ルーブル美術館展 日常を描くー風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄 at 国立新美術館
どうしても見たい一枚の絵があったので。
それがこちら。
ヨハネス・フェルメール『天文学者』(1668年)です。
フェルメールの描くふんわりしたやわらかい光が好きで、それを見るために足を運びました。
訪れたのは11日(土)の10時半頃。
チケット購入にも展示スペースへの入場にもまったく待つことはなかったです。
会場の混雑具合は少し人のことを気にしながら鑑賞する必要ありで、ところどころ人の流れがとまって人ごみになっているところがありました。
展示は6月1日(月)までで折り返しを過ぎているので、最終日までに混雑が増していくことが予想されます。
気になっている方は早めに足を運ばれることをおすすめします。
さて、この展覧会はサブタイトルに“日常を描く―風俗画に見るヨーロッパ絵画の神髄”とあるように、ルーブル美術館のコレクションをもとに、人々の日常生活の情景を描いた風俗画の歴史を一望する、というコンセプトの美術展です。
プロローグも含めて、全部で7つのパートから構成されていました。
プロローグⅠ
「すでに古代において…」風俗画の起源
プロローグⅡ
絵画のジャンル
第Ⅰ章
「労働と日々」―商人、働く人々、農民
第Ⅱ章
日常生活の寓意―風俗描写を超えて
第Ⅲ章
雅なる情景―日常生活における恋愛遊戯
第Ⅳ章
日常生活における自然―田園的・牧歌的風景と風俗的情景
第Ⅴ章
室内の女性―日常生活における女性
第Ⅵ章
アトリエの芸術家
ティツィアーノ、ブリューゲル、レンブラント、ルーベンス、ムリーリョ、ヴァトー、ブーシェ、ドラクロワ、ミレーなど、ずらりとそろった巨匠の作品を織り交ぜながら、16世紀初頭から19世紀半ばまでのヨーロッパ風俗画の歴史を眺めることができる、素晴らしい展示でした。
題材が人々の日常生活なので、展示されている絵も、魚屋さん、りんごの皮むきをする女性、女占い師にだまされてお財布をすられそうになっている夫人など、なにが描かれているのか一目瞭然で、誰にも身近に感じられて楽しめるものばかり。なかにはペンチで歯を抜かれているなんていう、ちょっとぞっとする絵なんかもありました。
解説もわかりやすいので、普段、「美術って難しくてとっつきにくい」と思っている方にとくにおすすめしたいです。
展示作品のなかで、特に印象的だった絵をご紹介したいと思います。
リュバン・ボージャン『チェス盤のある静物』(17世紀前半)
※画像はポスターおよびちらしを撮影したものです。(以下同)
モノの精緻な描写もさることながら、パンとワイン=キリストの肉と血、鏡=虚像、花=はかない生、チェスとトランプとマンドリン=享楽、つかのまの楽しみ、というように寓意に満ちたモノを配置して、聖と俗が混在する世界観を描いているところに惹かれました。
クエンティン・マセイス『両替商とその妻』(1514 年)
細部まで描きこまれた画面と、右奥の開いた窓の隙間から見える立ち話をしている二人の人物や、手前に置かれた鏡に映る窓辺の人物などの不思議な構図に、絵をじっくり見つめてあれこれ想像したくなる絵です。
ジャン=アントワーヌ・ヴァトー『二人の従妹』(1716年頃)
一組のカップルと、それを見つめる一人の女性。
この時代のフランス語の“姉妹”という単語には、”親しい女友達”という意味もあったそうです。
一人たたずむ後ろ姿の女性は何を思うのか? 顔が見えないだけに、彼女の胸のうちが気になります…。
個人的に、官能的な美しい女性を描かせたら、ティツィアーノの右に出る画家はいないと思っています。
長く豊かな髪。陶器のようになめらかで白い肌。ふっくらした肉付きに丸みのある体のライン。
今も昔も、男性が惹かれる女性の美しさには変わりがないのだと、しみじみ感じさせられました。
ポスターやちらしには出ていませんでしたが、ジャン=バティスト・カミーユ・コローの作品も3点ほど展示されていました。
彼の描く自然にはなんともいえない抒情があるんですよね…。
★Information
東京都港区六本木7-22-2
ルーブル美術館展 日常を描く―風俗画にみるヨーロッパ絵画の神髄
2/21(土)~6/1(月)
今回の展覧会にあわせて発売された、公式ガイドブックです。
ルーヴル美術館の名画 フェルメールと「風俗画」の巨匠たち: なぜ「天文学者」はキモノを着ているのか?
- 作者: 尾崎彰宏
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2015/02/10
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