芸を究める〜野村萬斎さんのドキュメント
去年2014年の年末に放送された、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」狂言師の野村萬斎さんを取り上げた回、録画していたものをようやく見終わりました。
萬斎さんと言えば、中学生の頃だったかな? NHK朝の連続テレビ小説「あぐり」で吉行淳之介の父、エイスケさんの役を演じていて初めて知り、そのエキセントリック、かつエネルギッシュな演技にぐわっと心をつかまれ、それ以来とっても気になる役者さんのひとり。
同じ頃、学校の行事で古典芸能鑑賞教室というのがあり、ここで萬斎さんのお父様、野村万作さんの狂言を見て、その身体表現の凄さに圧倒され、狂言をはじめ、歌舞伎、能、文楽など、型を追究する芸術を見続けています。
狂言や歌舞伎、能などに心を惹かれたのは、幼少期に数年、同じ型を追究するクラシックバレエを習っていたことも大きいかもしれません。
型を使った芸術って、本当に奥が深くて、まず体に型を染み込ませるまでにものすごく時間がかかるんですよね。でも、時間をかけて体得した型が、演じるうえで自分を支えてくれて助けてくれる。型どおりにやれば、それなりに形になって、お客さんに見せられるものにはなるんです。
でも、本当に大変なのはそこから。型をなぞりながらも、いかに自分の色を出すか。自分独自のものを加えていけるか。それを探究していくことが、芸の道。
NHKの番組でも、その過程の一部を追っていました。当主から次代の当主へ、代々受け継がれる一子相伝の秘曲、「狸の腹鼓」。尼に化けていたけれど、猟師に正体を見破られてしまった身重の母狸。腹鼓を打って命乞いをし、猟師に許してもらうという物語。
8年前に一度演じた、この秘曲に再び挑戦する萬斎さん。これまでとは笛の音を変えて、母狸の悲哀をより強く表現しようとしますが、音が変わったことで、習った型がはまらなくなってしまい、試行錯誤を繰り返します。
お父様の万作さんがさらっとおっしゃっていた、「頭で考えない。身体そのものから出てくる表現」という言葉。芸の本質を突いた凄みのある言葉です。
その年齢年齢でしか出せない表現、「時の花」を追究し、芸を究めていく果てしない道。その奥深さと凄みを感じる50分でした。
野村萬斎(2014年12月15日放送)| これまでの放送 | NHK プロフェッショナル 仕事の流儀