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うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

「お笑い江戸名所 歌川広景の全貌」 at 太田記念美術館

駅でポスターを見かけて「面白そう♪」と思ったこちらの展覧会を観てきました。

 

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江戸市中で繰り広げられる「あちゃー」な瞬間を切り取った浮世絵の数々。
人間だけでなく、狐、狸、犬、猫、河童や雷様なども登場。
まるでドリフのコントのようなドタバタで、笑いのツボは今とまったく変わりません。

 

歌川広重の「江戸名所百景」や葛飾北斎の「北斎漫画」などの作品の構図をかなり借りています。

一部だけ観ると「え、これほとんどそのままじゃん!!」というものも…。
一緒に元ネタが並べられているので、比べてみることができ、広景さんのすばらしいパロディのセンスを楽しむことができます。

歌川広景(うたがわひろかげ)は幕末に2年8か月という短期間しか活動しておらず、出生も絵師としての経歴も詳しいことはほとんどわかっていないんだそう。
サントリー美術館の「小田野直武と秋田蘭画」しかり、まだまだ知られていないことがたくさんで、江戸時代の文化の重層性、そして魅力は底なし沼ですね…。

 

★Information

太田記念美術館

東京都渋谷区神宮前1-10-10

 

お笑い江戸名所 歌川広景の全貌

 1/5(木)〜1/29(日)

 

壽新春大歌舞伎 昼の部「通し狂言 雙生隅田川」 at 新橋演舞場 1/14

市川右近 改め 三代目 市川右團次 襲名披露
二代目 市川右近 初舞台
の記念公演。
昼の部「通し狂言 雙生隅田川(ふたごすみだがわ)」を、1/14(土)に観劇してきました。

 

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作者は近松門左衛門

「隅田川」など、能の狂女ものの要素や梅若伝説などを取り込んだ、天狗が暗躍するお家乗っ取りのお話。

三代目猿之助さん(現・猿翁)が復活させた狂言で、今回で4回目の上演になるそうです。

 

襲名披露のおめでたい公演、そして一度観てみたいと思っていた演目だったので、チケット代を奮発しました!

(←あくまでも自分比。いつも歌舞伎座の幕見ばかりなので…。)

二階の右袖。

上手の端は見切れますが、花道や宙乗りの軌道はよく見える、よいお席でした。

 

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右團次さん、猿之助さん、右近くん、三人での宙乗り、早変わり、鯉つかみ、本水の中での大立ち回りなど、スペクタクルな演出が盛り沢山。

ケレン味たっぷりの澤瀉屋らしい演目でした。

 

まず新・右團次さん。

猿島惣太のちに七郎天狗と奴軍介の二役。

猿島惣太はもともと、公家の吉田家に仕える家老・淡路前司兼成(男女蔵さん)の息子で、自身も父同様に奉公していたのですが、遊女・唐糸(笑也さん)に惚れ込み、彼女を身請けするために家のお金を横領してしまいます。

横領してしまったお金と同額を貯め、また元の立場に戻りたいという願いを胸に、今は人買いにまで身を落とし、あばら家に妻となった唐糸と住んでいます。

買い付けた子どもを折檻して死なせてしまい、それが主君の息子・梅若丸だったことを知ると腹をかっ切って自害。

天狗にさらわれ行方不明になっている梅若丸の双子の片割れ、松若丸を見つけると言い、天狗に生まれ変わって空を飛んでいきます。

 

右團次さんの男らしい雰囲気が、猿島惣太の役にぴったり。

あばら家のあちこちに貯め込んだ黄金の小判に埋もれながら、色に溺れて主君に背いたこと、人買いという仕事に身を染めていたこと、主君の子息・梅若丸を誤って殺してしまったことなど、さまざまを悔いながら自害する場面は、絵的にも美しく、右團次さん渾身の演技が迫力満点でとても見応えがありました。

 

もうひと役、奴軍介は、梅若丸がお家乗っ取りを狙う景逸(猿弥さん)にそそのかされて、大切な鯉魚の軸に目を書き入れてしまったために、絵から抜け出た鯉を捕まえる泳ぎの達人。

冬ですが、本水を使った鯉つかみと、その後の景逸とその家臣との大立ち回り。

三代目猿之助さんの下で磨いたケレンの演技が存分に生かされていて、大団円にふさわしい迫力満点の見せ場でした。

 

そして、ご子息の二代目右近くん。 

吉田家の跡取り、双子の梅若丸と松若丸を早変わりで演じます。

6歳だそうですが、とてもその年齢とは思えないほどしっかりしています。

台詞もしっかり聞こえますし、演技もばっちり。

ふっくらした可愛らしい顔立ちもあって、右近くんが何かするたび、客席はめろめろ♡

早くも「将来が楽しみね〜」の声があちこちから聞こえてきていました。

 

猿之助さんは、吉田家の奥方、班女御前でご出演。

夫を亡くし、梅若丸と松若丸、2人の息子もいなくなってしまい、正気を失ってさまよう姿がとても痛々しく、抑えた動きや台詞で母の哀しみを美しく表現されていました。

猿之助さんは何をやってもほれぼれするほど、魅せてくれますね。

今回は役柄もあって控えめでしたが、母を演じる猿之助さん、素敵でした。

 

海老蔵さんは吉田家の家臣のひとり、県権正武国で、出番は少ないながらも美しい姿で舞台に華を添えていました。

 

中車さんの大江匡房は公家姿が立派。

衣冠束帯姿って、何割増しかで身にまとった人をかっこよく見せてくれるように思います。

流石の存在感で、芝居の要所要所をきりっと締めていらっしゃったように感じました。


芝居のところどころに「高嶋屋」や三升の紋など、襲名にちなんだものが散りばめられていて、右團次という名前とともに新しい道を歩きはじめられるのだなぁとしみじみ。
猿之助さん、海老蔵さんはじめ、みなさんが新・右團次さんを全面的にサポートされていたのが印象的でした。

梨園の出ではなく、ここまでくるのには大変な努力とご苦労だったと思いますが、ご襲名おめでとうございます!!

これからの右團次さん、そして右近くんのご活躍が楽しみです。

 

★Information

新橋演舞場

壽新春大歌舞伎

昼の部
通し狂言 雙生隅田川

1/3(火)〜1/27(金)

 

【配役】

猿島惣太 後に七郎天狗

奴軍介…市川右團次

班女御前…市川猿之助

大江匡房市川中車

淡路前司兼成…市川男女蔵

小布施主税…中村米吉

次郎坊天狗…大谷廣松

梅若丸/松若丸…市川右近

局 長尾…市川笑三郎

勘解由兵衛景逸…市川猿弥

惣太女房 唐糸…市川笑也

吉田少将行房…市川門之助

県権正武国…市川海老蔵

英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2016/17「アナスタシア」

英国ロイヤル・オペラ・ハウスの舞台が映画館で楽しめる企画。
2016/17シーズン、バレエの第1作目「アナスタシア」を観てきました。

 

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ケネス・マクミラン振付。
自分はロシア・ロマノフ王朝、最後の皇帝ニコライ2世の末娘アナスタシアだと主張するアナ・アンダーソンを描いた作品です。

良くも悪くもマクミランらしい、人間の内面にぐっと入り込むどろどろ重厚なバレエ。

第1幕、第2幕はロシア帝政時代の宮廷が舞台。

皇女として何不自由なく幸せに暮らしていた時代のアナスタシアの姿が描かれます。

音楽はチャイコフスキー、振付もクラシックな技法をふんだんに盛り込んだ優雅な雰囲気です。

第3幕では一転して、舞台は精神病院。

「私は皇女アナスタシアのはず…」自らのアイデンティティに悩むアナ。

電子音と人が会話している音声からはじまり、振付もきわめて現代的でコンテンポラリーダンスのよう。

 

記憶やアイデンティティ、喪失という作品のテーマがぎゅっと詰まった、精神病院を舞台に繰り広げられる第3幕が圧巻でした。
1971年の作品ですが、今見ても全然古く感じません。

振付も音楽も抽象度が高く、見る人によってさまざまなことを考えたり、感じたりできるような幅の広さを感じます。

その分、第1幕と第2幕が退屈で、とってつけた感がありました。

実際、このバレエはもともと第3幕のみが先に作られて上演され、その後第1幕第2幕を加えて全幕もののバレエとしてあらためて発表されたそうです。

 

英国ロイヤル・バレエ団はいろんな人種のダンサーがいるので、見た目や踊り、キャラスターもいろんなタイプの人がいて面白いですね。

その分、統一感がなく、バラついているともいえますが、公演ごとに役に合うダンサーを当てられるのも、ダンサーに多様性があるからこそ。

不気味な雰囲気で皇帝一家を陰で牛耳っているラスプーチン(ディアゴ・ソアレス)、第2幕の舞踏会の場面でダンサーとして登場し華を添えるマチルダ・クシシェンスカヤ(マリアネラ・ヌニェス)など、要所要所にぴったりのソリストが配置された豪華なキャストで、全編とおして見所がたくさんありました。

 

しかし、なんといっても主役のアナスタシア/アナのナタリア・オシポワが素晴らしかった!!

とくに3幕、「自分」という存在が崩れかけて、精神が不安定になっている状態を身体全体で表現する踊りが真に迫っていました。

彼女のずば抜けた身体能力が生かされていて、とてもはまっていると思います。

彼女は強靭な足の持ち主としても有名ですが、甲からつま先にかけてのラインが本当に美しいですね。
足先が映るたび、見とれてしまいました。

 

ちょっと歪んだ世界を表現した舞台装置、あの時代の貴族ならではの雰囲気たっぷりのクラシックで上品な衣裳など、細部も凝っていて素敵だったことを記しておきます。

 

 

 

★Information

英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2016/17

「アナスタシア」

 

【振付】ケネス・マクミラン

【音楽】ピョートル・チャイコフスキー&ボフスラフ・マルティヌー

【指揮】サイモン・ヒューエット

【出演】アナスタシア/アナ・アンダーソン:ナタリア・オシポワ

マチルダ・クシシェンスカヤ:マリアネラ・ヌニェス

ラスプーチン:ディアゴ・ソアレス

Cinema:「男と女 デジタル・リマスター版」

製作50周年を記念して、デジタル・リマスター版として美しく蘇った名作を映画館の大きなスクリーンで堪能してきました。

 

制作されてから50年の月日が流れているとは思えません。
♪ダバダバダ〜♪の音楽をはじめ、カラーとモノクロを使い分けた映像や斬新なモンタージュ。

主役二人のファッションなど、今観てもおしゃれで素敵。
"女"のアヌーク・エーメの大人ならではの可愛らしさ。
"男"のジャン=ルイ・トランティニャンの渋くてチャーミングな佇まい。
小さな子どもがいる親の顔も見せながら、さらっと大人の恋を描いているあたり、さすがフランス。

 

"amour"の国の映画を観た後は、さくっと恋ができそうな気分になりますね。

併映の、夜明けのパリをフェラーリで疾走する様子をワンテイクで撮った8分48秒のドキュメンタリー「ランデヴー デジタル・リマスター版」(1976年)も、すんごくかっこよかったです。

 

男と女 特別版 [DVD]

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★Information

「男と女 デジタル・リマスター版」

監督:クロード・ルルーシュ

1966年、フランス

 

Musee:「岩佐又兵衛と源氏絵 《古典》への挑戦」 at 出光美術館

さまざまな時代の画家が画題として取り組んだ『源氏物語』。
岩佐又兵衛が手がけた源氏絵を、土佐派によるやまと絵、俵屋宗達菱川師宣などの源氏絵もあわせて展示することで、又兵衛の源氏絵ならではの工夫、独自性を明らかにしようという展覧会。

 

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今、気になる人のひとり、岩佐又兵衛
作品数は少ないながらも、源氏絵だけではなく、三十六歌仙図や瀟湘八景図巻など、出光美術館所蔵のいろんなタイプの作品を観ることができました。

岩佐又兵衛というと、「山中常盤物語絵巻」の血みどろの場面の印象が強くて、"奇想の画家"というイメージがあったのですが、いい意味で普通の、創造性に富んだ腕のある絵師なんですね。

何をどんなふうに描いてもうまいし、ドラマが生まれる瞬間をぱっと切り取るセンスを感じます。


今回の展覧会のメインビジュアルに使われている「源氏物語 野々宮図」も、別れの場面そのものではなく、枯れゆく秋の野に佇む光源氏と従者を描き、別れを濃密に感じさせる物悲しい絵。

とても素敵でした。

 

岩佐又兵衛―浮世絵をつくった男の謎 (文春新書)

岩佐又兵衛―浮世絵をつくった男の謎 (文春新書)

 

 

★Information

出光美術館

東京都千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階

 

岩佐又兵衛と源氏絵 《古典》への挑戦

1/8(日)〜2/5(日)

Musee:「日本の伝統芸能展」 at 三井記念美術館

国立劇場開場50周年を記念した特別展。
「雅楽」「能楽」「歌舞伎」「文楽」「演芸」「琉球芸能・民俗芸能」の6つのジャンルに分けて、楽器や衣装、浮世絵など、伝統芸能にまつわる美術品が展示されています。

 

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三井家が金剛流の宗家から譲り受けたという室町時代の能面4つ、とくに女の面「孫次郎(オモカゲ)」が素晴らしかったです。

孫次郎という能楽師が、早くして亡くなった妻を思って作った能面だといういわれがあり、そこから"オモカゲ"と呼ばれているそう。

観る角度によって、いくつも表情が浮かび上がってきて、なんとも言えない雰囲気をまとった面でした。


そのほか、歌舞伎小屋の楽屋の様子を描いた錦絵(初代歌川国貞「楽屋錦絵」。立廻りの練習や踊りの稽古をしたり、舞台に上がるための身支度をしていたり、舞台裏の様子が伺えて楽しい)や、昭和の名優たちが実際身につけた歌舞伎の衣裳(とっても凝った装飾が施され、豪華で美しい)、大江巳之助作の文楽人形の首など、興味深いものばかり。

 

間近で見た文楽人形の大きさにあらためて驚きました。
マネキンが三人遣いを再現している展示もあり、足遣いの人の不自然なきつい体勢をはじめ、人形遣いの方の苦労がしのばれて、普段何気なく観ている舞台の裏の過酷さをしみじみと感じます。

それにしても衣裳をはじめ、伝統芸能で使われるものたちはなんと美しいのでしょうか。
少しずつ時代に合わせて変わりつつも、現代まで継承されているからこそ、演じる技はもちろん、こういったものを制作したり、修繕したりする技も残っているわけで、受け継いでいくって凄いなぁと思いました。
昔の人の思いに触れる貴重な遺産でもあるので、文楽や歌舞伎、能楽の一ファンとして、これからも長く続いていってほしいと願っています。


★Information

三井記念美術館

東京都中央区日本橋室町2-2-1 三井本館7階

 

日本の伝統芸能

2016年11/26(土)〜2017年1/28(土)

Livre:池上彰/佐藤優『僕らが毎日やっている最強の読み方』(東洋経済新報社、2017年)

2017年は勉強する年にしたいなぁとぼんやり考えていて、インパクトのある装丁が目についたこちらの一冊を手にとってみました。 

 

 

池上彰さんと佐藤優さん。

「知」を武器にして活躍するお二人が、最大限のアウトプットをするための、インプットの工夫の数々をテーマに対談したものをまとめた一冊。

 

意外と普通、というか、やはり基本に忠実。
ただ、それにかける時間や労力が尋常ではないレベル。
お二人のような立場になってもなお、絶えず貪欲に学び続ける姿勢に、敬服の念を抱かずにはいられません。
そして、「自分も!」とすごく勉強したくなりました。

 

 第1章の「僕らの新聞の読み方」が、"やっぱり基本は新聞なんだ"と納得でしたし、お二人のテーマへのアンテナの立て方や日々の情報収集のやり方のエッセンスが一番ぎゅっと詰まっていて、興味深かったです。