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うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

「ミュシャ展」 at 国立新美術館

行きたい行きたいと思っていた展覧会。

ようやく観に行くことができました…。

 

なんといっても、今回の展覧会の目玉。
冒頭から会場のほとんどのスペースを使って展示されている「スラブ叙事詩」全20点が圧巻です。
いつもは天井が必要以上に高く感じる国立新美術館が小さく感じられるほど、大きな大きな壁画。
王様や宗教指導者など、歴史的人物も描かれてはいるけれど、全体として見るとあまり目立たず、むしろ目が行くのは名もなき人々。
一人ひとり、ポーズや表情が細かく描きこまれています。
平和主義者だったミュシャ(ムハ)は残酷な場面でも直接的に表現するのを極力避けたとのことで、戦いを描いている絵もそこまで激しさはありません。

色合いがとても美しく、構図もかなりデザイン的なので、全然生々しくなくて、歴史というより物語の一場面を見ているよう。
叙事詩」っていうタイトルは、本当に的確だと思いました。

「スラブ叙事詩」全20点のうちの、撮影OKな作品が5点ありました。

そのうちの1点、「イヴァンチェの兄弟団学校」(1914年)部分。

 

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クラリチェ聖書の印刷が描かれた1枚。
文字が読める、印刷できる、自分たちの言語で表現できる、本というメディアの偉大さ。
新しい知識を得るワクワク感が伝わってきます。
全20点のうち、これが一番好きです。

 

あとのコーナーでは、パリ時代のミュシャの作品は代表作のみをほんの少し、そして万国博覧会のパビリオンのデザインや、チェコが国家として独立した後、ミュシャ(ムハ)が無償でデザインを引き受けたお札や切手などが展示されていました。

会場では「チェコってヨーロッパのどこら辺にある国?」「スラブ民族とかゲルマン民族とか、よくわかんない」「フス派って何?」という声がちらほら聞こえました。
せっかく「スラブ叙事詩」全点を展示して、従来のアール・ヌーヴォーの騎手としてではなく、愛国心溢れるチェコ人としてのミュシャ(ムハ)を紹介しているのですから、パネルの解説等を工夫して、絵の背景にある知識をもう少し丁寧に伝える努力をしてもよかったのでは?と思いました。

 

★Information

国立新美術館

ミュシャ

3/8(水)〜6/5(月)

「食神さまの不思議なレストラン」「スーパー浮世絵 江戸の秘密」 at 日本橋茅場町特設会場

友人に誘われて、茅場町の空きビルを使ったデジタルアート展示2つを楽しんできました。


まずはこちらから。

「食神さまの不思議なレストラン」
和食をテーマに「見て食べる体験型デジタルアート」がコンセプト。

 

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冒頭の四季の部屋はすっごく綺麗でした。
ほかのパートは…、アイデア出しからはじまって「ゼロからものを創り上げるのって大変だよね…」という感じ。
好みの問題もあると思いますが、いろいろデジタルアートを見ると、teamLabってアイデアやビジュアルのセンスが抜群でやっぱり凄いんだなぁと思いました。

レストランでは、あらかじめチケットについてくる「神様のおいなりさん」と、一緒に頼んだ「味噌と出汁の相性を考える 3種の味噌汁」を食べました。

 

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少し味が濃い目でしたが、お味噌汁の飲み比べが楽しかったです。

2つ目は「スーパー浮世絵 江戸の秘密」展。
高細密デジタルデータ化された保存状態のよい浮世絵2万点の中から選んだ作品を、最新技術で映像化した"動く浮世絵"が楽しめます。
あわせて、浮世絵に描かれた江戸文化も学べる博物館のような企画。

 

"動く浮世絵"、思っていた以上に楽しかったです!!
小さな浮世絵が大きくなって動いているので、描かれた世界がより身近に。
パートごとの展示で、特に面白かったのは江戸湾と、花街のパート。
迫力満点、北斎の動く波!!

 

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そして、近寄ると微笑んでくれる花魁に胸キュン。

 

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日本橋なら物売りの掛け声や人々の行き交う足音、芝居小屋なら附け打ちや三味線と、具体的に音で場を演出できるので、ものすごく臨場感がありました。

会場に流れる愛之助さんの声の案内も、聞き取りやすいし、うまくてわかりやすかったです。

この手の、空間を見て回るエンタテインメントは音の演出って大切ですね。

少し工夫すると、それだけで面白いものになる。
江戸東京博物館もそうですが、浮世絵と江戸文化って、すごく魅力的なコンテンツなんだということをつくづく感じました。

 

★Information

日本橋茅場町特設会場

「食神さまの不思議なレストラン」

「スーパー浮世絵 江戸の秘密」

 1/28(土)〜5/21(日)

「狂言の会」 at 国立能楽堂

流派を超えた他の家との共演で、それぞれの味わいの違いを比べることのできる企画。
人間国宝のお三方に、中堅・若手が絡む配役で。

今年で2年目になるそうです。


「二人袴」(和泉流)

シテ/親 野村万作

アド/舅 三宅右近

小アド/太郎冠者 野口隆行

小アド/聟 奥津健太郎


この作品を観るのは2回目。
初めて観たときは、まだまだ子どもの甘ったれな息子×過保護で心配性なお父さん、親子二人のお話という印象が強かったのですが、流派の違いもあるのか(初見は大蔵流でした)まったく違う味わいで、別の演目を観ているような感じでした。
お父さん&息子、お嫁さんの実家のお父さんと家来の太郎冠者、この4人の掛け合いがテンポよく進み、物語がより立体的に生き生きとして見えました。
お父さんを演じた野村万作さんのいぶし銀のような雰囲気が素敵。

「咲嘩」(和泉流)

シテ/太郎冠者 野村萬

アド/主 三宅近成

小アド/咲嘩


主人に「おじさんを迎えに行ってこい」と言われたのに、盗人を連れて帰ってしまい怒られて、飄々とすっとぼけた真似をしながらも結局体良く追い返してしまう太郎冠者を演じた、野村萬さんが素晴らしかったです!
ちょっと足りないように見せて、本当はとってもしたたかで、でも決して嫌味には見えなくて、「ああ、こういうちゃっかりした人、いるよね」という現実味がありました。

「首引」(大蔵流)

シテ/親鬼 山本東次郎

アド/鎮西八郎為朝 善竹隆平

アド/姫鬼 善竹隆司

立衆/眷属 山本泰太郎

立衆/眷属 山本凛太郎

立衆/眷属 水木武郎

立衆/眷属 若松隆

立衆/眷属 山本則重


気弱な姫鬼と力持ちのイケメン・鎮西八郎為朝の力比べ。
姫鬼を甘やかす過保護なパパ鬼(山本東次郎さん)が可愛かった!
鬼の面も怖いというより、ちょっとユーモラスな造形で、キレッキレな動きと人間とは違う雰囲気のある声色や台詞廻しが凄かったです。
鬼のくせに弱々な姫を勝たせるために、パパ鬼が仲間に加勢させて自分は審判かつ応援に徹するんですが、その掛け声が「ここで負けたら鬼として恥ずかしいぞ。がんばれ!負けるな!」という必死さなのに調子はどこかのんびりしていて、姫鬼筆頭に連なった鬼たちのわらわらした動きと相まって、なんともユーモラスで面白かったです。

 

国立能楽堂の楽しみの一つは、小さいながらも素敵な中庭。

今日はお天気もよく、かつての「みどりの日」の名にふさわしく、中庭の新緑が美しく輝いていました。

 

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★Information

狂言の会 家・世代を越えて

国立能楽堂

4/29(土) 13時開演

三浦豊『木のみかた 街を歩こう、森へ行こう』(ミシマ社、2017年)

去年の6月でしたでしょうか。
街の森ツアーに参加して、谷根千にひそむ小さな森を探して一緒に歩いた森の案内人、三浦さんの出された本。
ミシマ社のコーヒーと一冊シリーズのうちの一冊です。

植物へのあふれんばかりの愛と尊敬のまなざし、そして博識な三浦さん独自の着眼点が混ざり合った、ユニークな木のみかたの魅力は本でも十分伝わってきます。
が、あの独特の穏やかで柔らかななかに、時々毒が混ざるご本人の案内で、一緒に見てまわる楽しさ、驚きはやっぱり紙面では再現できていないように感じました。

この本がきっかけで三浦さんを知り、彼と一緒に木を見て歩く体験をする人が増えてくれるといいなぁと思います。
ほんとに楽しくて、参加後は「森目線のメガネ」とでも呼びたい、違うレイヤーで世界が見えてくる。
このワクワク体験を一人でも多くの方に!!
そうしたら、自然との付き合い方、街の景色など、私たちを取り巻く環境が少しずつより楽しい方向に変わっていくのではないかと思うのです。

 

 

木のみかた 街を歩こう、森へ行こう (コーヒーと一冊)

木のみかた 街を歩こう、森へ行こう (コーヒーと一冊)

 

 

 

「フェードル」 at シアターコクーン 4/22マチネ

ジャン・ラシーヌギリシャ悲劇をもとに書いた、フランス戯曲の代表的な作品のひとつ。
大竹しのぶさんの演技を一度生で観てみたくて、何年ぶりかもわからない、超王道のストレートプレイを鑑賞しました。

 

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とっても観づらいコクーンシートでの観劇だったのも大いに関係があるかもしれませんが、役者さんたちの熱演の割にはあまり響くものがなかったなぁというのが正直なところです。


ギリシャ悲劇がもとになっていることもあって、逃れられない自らの運命(愛の女神ヴィーナスの呪い)として、義理の息子・イッポリットへの禁断の愛に狂っていくフェードルによって、周りの人たちも破滅の道に引きずり込まれる、というドロドロした話なのですが、出演者の演技の質やレベルにバラツキがあって、ときどき緊張が途切れてしまうんです。
こういうお話は緊張の糸が途切れないように、が〜っと一気にクライマックスまで持っていってくれないと辛いのですが…。


真ん中に椅子がひとつ置いてあるだけのシンプルな舞台で、大げさな身体の動きは許されず、お互いの言葉だけで物語を紡いでいく(それも膨大な独白ばかり)、王道の演出なので、きちんと台詞を話すことができる役者さんを揃えないといけないのですが、今はそれも難しくなってるんでしょうね。

 

物語の中心にいる王妃や王子、王よりも、フェードルの乳母エノーヌ役のキムラ緑子さんと、王子イッポリットの養育係テラメーヌ役の谷田光さん、脇を固めるお二人の演技がきらりと光っていて印象的でした。

木を見て森を見ず…?

仕事が最大の山場を越えて落ち着いてみれば、会社に対して思うことがふつふつと。

 

社会人生活も10数年。

転職を何回かしているので、30代半ばで未だに一番下っ端。

 

まぁ、それはそれとして、経験を重ねてきて思うのは、自分の職分をきっちり果たすことばっかりに一生懸命で、「全体として見たらどうか?」「大きな目で見た時、自分のやるべきことはなにか?」という本質を押さえたうえで仕事をしている人、できる人って、本当に少ないんだな、ということ。

 

自分のことばかり考えて仕事してる人が多いから、チームならではの強みが生かせず、いつまでもダメな組織のままで、無駄な仕事が減らなくて、残業してもしても終わらないっていう悪循環になっているように思えてならない…。

 

大変、大変、人が足りないばっかり言ってるし。

みんな、定時で帰りたい、休みたいと、本気で思っているのかな…?

足りないのは人ではなく、知恵なのではないかと思う今日この頃。

歌舞伎座が…

昨日の歌舞伎座の惨状が、いまだに衝撃的で信じられない…。

歌舞伎座は1階で観ようと思うとなかなかいいお値段なので、いつも観たいものだけ幕見するか、3階どまり。
だけど本当に久しぶりに「これはいい席で観たい」と思う演目&役者さんばかりだったので、ちょっと頑張って1階後方の2等席で観てみたら、もう…。

 

芝居は素晴らしかったけど、周りの観客のマナーが「え?」と思うぐらいひどくて閉口。

 

連れの人と話し出す、
遅れて入ってきて、遠慮なく「私の席、どこですか?」「真ん中?」「すみませんね」と普通の声でやりとり、
ビニール袋をがさがさがさがさ、
背もたれに背をつけず、前のめりで観劇、
電源を切らず、スマホをちらちら確認、
これ全部、休憩中じゃなくて、お芝居の途中のこと。
みなさん、私よりも年上の方ばかり。
「本当にお芝居を楽しみにここに来ているんですよね?」と言いたくなる人の多さよ。
怒りを通り越して、呆れるし、哀しくなった…。

 

子どもの頃、ごくたま〜に親に連れて行ってもらう歌舞伎座は、お芝居を観にきている大人たちのふるまいや会話、おしゃれな装い、周囲の人への気配りがとっても素敵で、「こんな大人になりたいなぁ…」「大人になったら、こんなふうに自分のお金で一等席で歌舞伎が観られるようになりたい!」と思う憧れの場所だったのになぁ…。

隣が子どもだと嫌がったり、眉をひそめたりすることなく、きちんと一人前扱いをしてくださって、昔の舞台や役者さんの思い出話を聞かせてもらったり、演目の詳しいいわれを教えてくださったり、「お若いのに渋い趣味だわね」と幕間にお菓子をいただいたり、たまたま席が隣になった方とのいい思い出がいっぱいあるのに。

 

あの粋な大人たちはどこへいってしまったの?
幕見や3階席で観てる時、下の階がこんな有様だなんて、思ったこともなかった。
たまたま運悪く、周りの人に恵まれない日に当たってしまったと信じたい。

 

あまりにも衝撃的で、自分から誘って付き合ってもらったにも関わらず、友人に愚痴ってしまった。