うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

「歌舞伎役者 片岡仁左衛門 登仙の巻」

国立映画アーカイブ開館記念のアンコール特集から「歌舞伎役者 片岡仁左衛門 登仙の巻」を観てきました。
13世片岡仁左衛門を追ったドキュメンタリーの最終巻です。

 

「荒川の佐吉」政五郎、「楼門五三桐」石川五右衛門、「菅原伝授手習鑑」車引の時平、「御浜御殿豊綱卿」勘解由、「鬼一法眼三略巻」奥庭の鬼一、そして最後の舞台になった「八陣守護城」清正。
新歌舞伎から古典まで、90歳になってなお、復活狂言や初役に挑む芝居の虫。
板の上ではすごくかっこいいのに、素顔はおっとりほんわかされていて、愛らしく、かつ高潔の人。
仮名手本忠臣蔵」の四段目で、判官と由良之助の二役を演じる夢を見て、切腹してるのに、
その場に駆けつけなきゃいけない、どうしよう…?と、うんうん悩み苦しんで目が覚めた…と語る場面は、そのお人柄がよく伝わるひと幕。

朝夕、ご先祖様への挨拶を欠かさず、「お父ちゃんに教えてもらったことがこの世界で生きていくうえで本当に役に立っている」と語る、家族への思いの強い方。
我當さんの梅王丸、当代の仁左さん(当時は孝夫)の松王丸、秀太郎さんの桜丸と、3人の息子が三つ子を演じ、自身は時平をつとめた舞台の幕が開く前、お念仏かなにかを一心に唱えていた姿が印象的でした。


芸談として興味深かったのは、寺子屋の松王丸が菅秀才の首実検をするときの型の話。
初世吉右衛門はじめ、さまざまな役者の型を実際にやってみせてくれるのですが、特筆すべきは六世菊五郎
さっとしたシンプルなやり方で、役の性根をわかりやすく表現する、極めて現代的な感覚を持っていて、だからこそ神のように崇めているんだなぁということが伝わってきました。

 

★Information

国立映画アーカイブ開館記念 アンコール特集

 

歌舞伎役者 片岡仁左衛門 登仙の巻

(1994年、自由工房)

監督:羽田澄子