うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

ハンブルク・バレエ団2018年日本公演「椿姫」 at 東京文化会館 2/4

2年ぶりのハンブルク・バレエ団の来日公演。

こんなに早くまた来日してくれるなんて嬉しい限り。
前回の来日公演で「リリオム」と「夏の夜の夢」を観て、ノイマイヤーの創り出す世界にすっかり魅せられてしまったので、今回はガラも含めてすべて足を運ぶ予定にしています。

 

まずは彼の代表作「椿姫」。
アレクサンドル・デュマ・フィスの小説に基づく、高級娼婦マルグリットと青年アルマンの悲しい恋の物語。
ドラマティック、かつロマンティック。
言葉がないゆえに、物語がより濃厚で雄弁に感じられます。
全編に使われたショパンの音楽がぴったり。
生のオーケストラの音なのがまた贅沢でたまりません。
なかにはピアノのみの曲もあり、普段は聞こえないダンサーの息づかいがこちらにまで伝わってくる場面もありました。
ユルゲン・ローゼによる舞台装置と衣装も、時代の空気感を出しながら、品よく美しいです。

 

来日直前にキャスト変更があり、主人公の恋人コンビは初日と同じ。

コジョカルのマルグリットは、芯の強さを秘めた可憐さが持ち味の人だけに、高級娼婦には見えませんでしたが、病みやつれて、愛しているからこそ身を引く後半がよかったです。
彼女はどこか儚げな雰囲気があるので、哀しみや健気さなどを表現する場面がとてもはまると思います。
トルーシュのアルマンは、熱血で一途な「可愛い年下の男の子」という感じ。
向こう見ずの若い情熱が、病で死に向かっている内省的なマルグリットと対照的。
コジョカルと寄り添うと、2人のピュアさが真剣な恋の思いに重なります。
白のパ・ド・ドゥの幸福あふれる浮遊感。
愛憎半ばの黒のパ・ド・ドゥが素晴らしかった!

 

そして物語を影から支配するアッツォーニのマノンとリアブコのデ・グリュー!!
2人の息のぴったり合った濃密な踊りが、作品にさらなる深さと厚みを加えていました。
ラスト近くの息絶えたマノンを抱えて、さまようデ・グリュー。
死を迎えても引き裂かれないその姿はマルグリットとアルマンとは対照的で、その残酷な違いが涙を誘います。

 

菅井円加さんのプリュダンスのあふれんばかりの輝き。
彼女は本当に華がありますね。
溌剌としていて、どこで踊っていても目を引きます。
チャキチャキした姐御肌で、「メリットがあるからマルグリットと一緒にいる」というちゃかりしたたかな面も見え、人間くさいプリュダンスでした。

 

ムッシュー・デュバル、アルマンのパパは、前回来日公演「リリオム」で、コジョカルと組んでいたユング
渋くてかっこいいパパです。
ユングとコジョカル、踊りの相性がいいのか、「息子の将来のために身を引いてくれ」「…わかりました」という一連のやりとり、そして最後にマルグリットの手にキスをして去っていく場面が、全編とおしてダンサー同士のケミストリーをもっとも強く感じました。

 

コールドバレエまで、舞台上のあちこちでさまざまなやりとりが同時に進行し、物語全体を織り上げていくのは、これまで観たノイマイヤー作品同様。
ダンサー1人ひとりがとっても個性的で、本当に役を生きていて、一瞬たりとも目が離せない、濃厚なステージでした。

 

★Information
ハンブルク・バレエ団2018年日本公演
「椿姫」
東京文化会館
2/4(日) 14時開演

プロローグ付全3幕
音楽:フレデリック・ショパン
振付・演出:ジョン・ノイマイヤー
装置・衣裳:ユルゲン・ローゼ

演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:マルクス・レーティネン
ピアノ:ミハル・ビアルク、オンドレイ・ルドチェンコ

主なキャスト
マルグリット・ゴーティエ:アリーナ・コジョカル
アルマン・デュバル:アレクサンドル・トルーシュ
ムッシュー・デュバル:カーステン・ユング
ナニーヌ(マルグリットの侍女):パトリシア・フリッツァ
公爵:ダリオ・フランコーニ
プリュダンス:菅井円加
オランプ:フロレンシア・チネラート
伯爵N:コンスタンティン・ツェリコフ
マノン・レスコー:シルヴィア・アッツォーニ
デ・グリュー:アレクサンドル・リアブコ