うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

六月大歌舞伎 昼の部 at 歌舞伎座 6/18

演目&役者さんの組み合わせが好みだったので、今月は昼の部を観に行きました。

 

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◆「名月八幡祭」

越後の縮屋新助は深川芸者の美代吉に惚れ、彼女には船頭をしている三次という男がいるのを知りながらも、彼女の「百両を工面してくれたら一緒になってもいい」という言葉を信じて、故郷の家、田畑を売ってお金を用意します。

しかし、美代吉には通ってくれていたお殿様からの手切れ金百両が入り、もはやいらないお金。

美代吉に愛想尽かしをされ、何もかも失った新助は、深川祭の夜、押し寄せた大勢の人が原因で永代橋が落ちて混乱し、雷雨にみまわれる中、復讐するために美代吉を探し回ります…。


松緑さんの新助さん、田舎の真面目で純朴な青年の恋で、思っていたほどエキセントリックではありませんでした。
美代吉への恋が純粋でキラキラしてるので、袖にされてからの嘆きが本当に可哀想で観ているこちらも胸が痛くて…。
新助にそっと寄り添う魚惣夫婦(猿弥さんと竹三郎さん)のあたたかさに救われました。
新助の運命を狂わせる二人、笑也さんの美代吉と猿之助さんの三次が恋人同士に見えなくて残念でした。

 

この作品は舞台設置も美しくて、素敵なんです。

水路が巡らされ舟が足代わりの深川の町の様子、殺し場の本水を使った豪雨の演出、晴れた空に昇る満月と水たまりに映る月、2つの輝く月が印象的なラストシーンまで。

蒸し暑くなってくる今の季節にぴったりの演目でした。

◆澤瀉十種の内 「浮世風呂

銭湯でお客さんの背を流したりして働く三助の踊り。

なんと、なめくじも登場します。


幕開け、朝風呂の雰囲気がよく出た照明が美しい。
すっきりとかっこよく踊る猿之助さん。
いつもより足が出た衣装で、すらっとした美しい足にドキドキしました。

いろんな踊りをぱっぱっと踊り分ける場面も、なんとも鮮やかでお見事!!

猿之助さんの踊りはいつ観てもキレッキレで惚れ惚れします。

 

「流しの隅から見初めて染めて」と三助に言いよる種之助さんのなめくじが色っぽくて可愛くてびっくり。

頭にちょこんとツノをのせているのですが、見た目は可愛い女の子。

(着物に"なめくじ"と書いてあるのがおかしい)

でも動きや身のこなしからなめくじのぬめっと感が伝わってきて、なんとも艶っぽい。

最後は猿之助さんの三助に塩をかけられて、すっぽんに消えていってしまいました…。

 

最後は刺青が入ったお兄さんたちとの風呂桶を使った立ち回り。

鮮やかに何度もトンボを切っての立ち回りの後、見得でかっこいい幕切れ。


◆「御所桜堀川夜討」(弁慶上使)

生まれた時以外泣いたことがないという武蔵坊弁慶の、たった一度の恋。

そして、その恋のために一度だけ泣いたという伝説に基づくお話。


吉右衛門さんの弁慶、隈取りや鬘、長袴などのこしらえがよく映えて、役者絵から抜け出てきたように立派。
そして、大きな大きな弁慶。
喋るたび、動くたび、そして黙っていても、弁慶のときどきの気持ちが客席を満たします。

たった一夜、情を交わしたことで、しのぶという娘を授かった弁慶とおわさ。

しかし、義経の正室で平家の血を引く卿の君の身代わりとして、そのしのぶを殺さなければならない、という悲劇が二人に降りかかります。

 

娘を殺し、殺されしているのに、十七年の時を超え、お互いの手元に残ったたったひとつの恋の証、赤い振袖が手掛かりとなって、お互いにあのときの相手とわかると、ぱっと乙女に戻ってしまう雀右衛門さんのおわさが可愛く哀れでした。

 

そして、卿の君の身代わりとして他の女性の首を差し出していることがバレないようにと、自らも犠牲になる又五郎さんの侍従太郎が渋くて立派。

又五郎さん、肚でうける芝居もうまいですね。
米吉さんのしのぶが健気で美しく、しのぶの首と侍従太郎の首を抱えて弁慶が花道を去っていく最後まで、丸本物らしくずっしり見応えのある一幕でした。

 

★Information

六月大歌舞伎 at 歌舞伎座

昼の部

一、名月八幡祭

二、澤瀉十種の内 浮世風呂

三、御所桜堀川夜討 弁慶上使

 

6/2(金)〜6/26(月)