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うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

国立劇場 2月文楽公演 第三部「冥途の飛脚」 2/4

演劇

まだまだ続く、国立劇場開場50周年記念。
2月文楽公演は「近松名作集」と銘打って、3部ともすべて近松門左衛門作品がかかっています。

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初日に第三部「冥途の飛脚」を観てきました。
「愛しい女を他の男に渡したくない」と、公金横領という罪を犯す飛脚問屋の忠兵衛と、欠点だらけのダメ男でも惚れぬいて深く愛する遊女・梅川の恋の顛末。

ここしばらく、時代物ばかり観ていて、久しぶりの世話物でした。
国立劇場開場50周年記念の公演は「一谷嫩軍記」「仮名手本忠臣蔵」と、素晴らしい舞台が続いていたので、今日も楽しみにしていたのですが、「あれれっ?」という感じ。
このお話、ふんばれず、自分の弱さに流されていく人間の心の有り様を描いた、救いようがないほど暗く重く深い話だと思うのですが、そういう人の心のどん底を覗き込んでいるような怖さや凄みが感じられませんでした…。

 

松香太夫が病気療養のため休演されたので、太夫&三味線の床コンビは、

淡路町の段:咲甫太夫&清友→呂勢太夫&清治の語り継ぎ

・封印切の段:千歳太夫&富助

・道行相合いかご:梅川・文字久太夫、忠兵衛・睦太夫、他のかけあい

でした。
太夫の語りからは、恋ゆえに道を踏み外してしまう忠兵衛の心の迷いや震えがいまいち見えませんでしたし、梅川の嘆きもこちらに刺さってこず、さらりと流れていった印象。

みなさん、「元気にはきはきと」という感じの語りでどの部分もくっきりしすぎていて、緩急や抑揚のメリハリがなく、一本調子に感じられます。

封印切の段を語った千歳太夫&富助さんのコンビは、昨年12月の「仮名手本忠臣蔵」9段目、山科閑居の段がとてもよかったので、楽しみにしていたのですが…。

世話物って、ある意味時代物よりも難しいのかもしれません。

 

対する人形は、玉男さんの忠兵衛に清十郎さんの梅川。

文句のない配役ですが、このお二人が恋人同士でがっつり組まれるのは珍しいような…。

どちらも無駄な動きは極力抑えた品のよい遣いぶりで、悲恋の恋人同士の雰囲気をたっぷり堪能させてくれました。

とくに清十郎さんの梅川は、忠兵衛を愛したばっかりに、彼のせいでどんどん追い詰められていく状況をぐっと堪えている様が美しく(あまりの動揺のためか、ずっと手がわなわな震えているのです)、印象的でした。

 

この作品はツメ人形や馬などが立ち働く様を見せて飛脚問屋の繁盛ぶりを表現したり、300両を懐に入れて家を出た忠兵衛が「一刻も早く武家にお金を届けなければ」「でも梅川に会いたい…」と逡巡しながら街を歩き、結局欲望に負けて遊郭に足を運んでしまう場面を、動く背景や羽織、野良犬の人形を登場させて描いたり、二人がお互いに気遣いあいながら逃げて行く様を、羽織や雪を使って美しく演出したりと、とにかく細部まで練られていて見応えがあります。

そんな見どころがたくさん詰まった作品だからこそ、舞台をひっぱる太夫にはもっと頑張ってほしい…。

そう強く思いました。

 

★Information

国立劇場 2月文楽公演

近松名作集

第三部「 冥途の飛脚」

2/4(土)〜2/20(月)