うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

Theatre:国立能楽堂 一月定例公演 1/4

今年の芝居はじめ。
国立能楽堂 一月定例公演を観てきました。

 

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演目は能「老松」(金春流) 紅梅天女イロエノ働キと狂言「大黒連歌」(大蔵流)です。

 

いつもは狂言のあとに能という順番で上演されるのですが、今日は国立能楽堂の今年初めての上演ということで奉納の意味合いもあったのか、能→狂言という順番での上演でした。


能は九州・太宰府天満宮末社として祀られている老松の神と紅梅の木の精が現れて舞を舞い、御代を寿ぐ「老松」。

菅原道真にまつわる飛び梅伝説や、梅と松の話(梅は唐の時代、文学が盛んだった時はもっと色濃く香っていたため、文学を愛する木、"好文木"と呼ばれる。松は、秦の始皇帝が狩りの途中雨に降られ木陰で雨宿りした際、葉を広げ隙間を塞いで皇帝を雨から守った徳の高い木である。)が語られるなど、おめでたくありがたいエピソードが詰め込まれています。

君が代は 千代に八千代に さざれ石の巌をとなりて 苔のむすまで」と、現在、国歌「君が代」に使われている詞章の一部も出てきました。

かつて、江戸城で年初めの能楽は「高砂」「東北」に加えて、この「老松」が上演されていたそうです。

 

小書「紅梅天女イロエノ働キ」とある特別演出で、老松の神に加えて紅梅の精が出てきて舞う、とても華やかな舞台でした。

シテ(老人、老松の神)の金春安明さん(後で調べてみたら金春流の当代でした…)が深い響きのあるとてもよいお声で聞き惚れてしまいました。

とはいうものの、祝祭色の強いおめでたい演目なので、全体的にゆったりとした雰囲気で、ところどころ眠気が…。

舞台上で笛や鼓のみの演奏が続く場面が多く、舞台になにかを下ろそうとしているような、そんな印象を受けました。


狂言の「大黒連歌」は、毎年、比叡山の大黒天に詣でている男二人が、今年も参拝して連歌を奉納すると、毎年信心深く参拝してくれること、また奉納された歌の面白さを喜んで大黒天が現れ、宝物がいっぱい詰まった袋と打ち出の小槌を与え、ご機嫌で去っていくというお話。

比叡山の大黒天は、大黒天のほか、毘沙門天と弁財天が一緒になった三面六臂大黒天という大変珍しいお姿なのですが、その縁起も語られていました。

 

狂言としてはかなり独特の雰囲気を持った作品で、大黒様の登場や男二人に祝福を与える場面で鼓や笛、謡が入り、役者以外のそうした方々は舞台の奥で輪を作って控えています。

打ち出の小槌を持って、袋を担いだ大黒天が、本当に絵に描いたような姿で舞台に登場するので、神様が現れた瞬間を目撃しているようで、大変ありがたい気持ちになりました。


新年にふさわしいおめでたい演目を観て、ありがたい気分に。

 

国立能楽堂の中も、新年のお飾りが美しくしつらえられていました。

玄関のお飾り。

 

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ロビーに飾られた鏡餅

 

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とても大きくて立派!!


お年賀として、能の演目をテーマにした特製カレンダーもいただきました。

 

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たっぷり充電できたので、今日からはじまった日常を、また新たな気持ちでがんばりたいと思います。

 

★Information

国立能楽堂 一月定例公演 1/4

 

能【金春流】 老松 紅梅天女イロエノ働キ

前シテ/老人 後シテ/老松の神 金春安明

前ツレ/男 金春憲和

後ツレ/紅梅殿 本田光洋

ワキ/梅津何某 高井松男

ワキツレ/従者 則久英志

ワキツレ/従者 梅村昌功

アイ/門前の者 善竹大二郎

笛 藤田次郎

小鼓 住駒匡彦

大鼓 柿原弘和

太鼓 桜井均

後見 櫻間金記、横山紳一

地謡は予定から変更があったため、割愛

 

狂言大蔵流】 大黒連歌
シテ/大黒天 大蔵吉次郎
アド/参詣人 善竹富太郎

アド/参詣人 大蔵教義
地謡 宮本昇、大蔵彌太郎、善竹十郎、大蔵基誠