なんて素敵な女性がいたものだ〜半澤鶴子さん
2017年、新しい年の1日目。
NHKのETV特集アンコール、「女ひとり 70歳の茶事行脚」を観ました。
茶事は千利休が考案したものと言われ、懐石料理とお酒でのもてなしから茶席まで4時間に及ぶお茶会。
この茶事を依頼に応じて催す、出張茶事の第一人者として知られる女性、半澤鶴子さんのドキュメンタリーです。
半澤さんは70歳になって、茶釜などの茶事に必要な道具一切を車に積み、道中、ご縁があって出会った人を茶事に招くという旅に、春夏秋冬、季節ごとに出かけます。
番組ではその旅先での出会いと茶事の様子を追いかけていました。
半澤鶴子さんのやんわりした関西弁の語り、そしてお着物であれこれと立ち働く姿がとても美しいのです。
番組途中で生い立ちが語られていたのですが、幼い頃に父母と別れ(置き去りにされるような形だったようです…)、親戚に面倒を見てもらっため、誰にも甘えることができず、大変苦労されたようです。
でも、その苦労をまったく感じさせない、清らかで、時に神々しさすら覚える佇まいに魅了されました。
たった一人で、材料集めや献立づくり、茶席の掃除や室礼、提供する料理の調理、当日のもてなしと、茶事のすべてをこなす半澤さん。
それだけでもすごいことなのに、「ああもしてあげられたか、こうもしてあげられたかと、心残りばかりです」と仰る、その謙虚な姿勢。
こんなに愛に溢れた、素敵な方がいたなんて…。
春、新潟・寺泊の古い茶室で、地元の方々を招いてのスギナやヨモギなど、春の野草を使った茶事。
夏、滋賀の琵琶湖畔で、漁師さんたちを招いてのビワマスを使った茶事。
秋、京都・瑞峯院にある平成待庵で、ご住職をもてなした一対一の茶事。
岡山の農村で、80歳を超えた幼馴染の女性二人を招いた茶事。
冬、奥会津、雪の中で女子高生三人をもてなした茶事。
お茶の席というと、どうしても作法のことが気になり緊張して堅苦しいもの、というイメージがありますが、半澤さんの茶事はまったく別物。
みなさん、リラックスしていて、なんとも言えないいいお顔をされており、ぽつりともれる言葉のそれぞれがとても印象深かったです。
それも半澤さんのお人柄ゆえ、なのでしょうね。
"一期一会"というのがどういうことなのか、茶の湯の真髄を半澤さんのお姿をとおしてのぞかせていただいた時間だったように思います。
「花一輪に飼いならされて」
半澤さんが慕っている、京都・瑞峯院のご住職とのやりとりの中ででてきて、印象に残った言葉です。