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うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

通し狂言 仮名手本忠臣蔵【第三部】 at 国立劇場

演劇

国立劇場開場50周年記念。

三ヶ月にわたる「仮名手本忠臣蔵」の完全通し上演。
12月の第三部は、八段目「道行旅路の嫁入」から十一段目「花水橋引揚げの場」まで。

 

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塩谷判官が高師直に斬りかかったとき、それを止めた加古川本蔵。
その一件がもとで本蔵に振りかかる悲劇。
由良之助の依頼に応え、討ち入りに向けて武具類を調達した堺の商人・天川屋義平がみせる侠気。
そしてたくさんの人の思いを背負い、浪士たちが高家に討ち入って無事本懐を遂げ、主・塩谷判官の眠る菩提寺に向かうまで。
3か月追いかけた物語もいよいよ完結。

 

八段目 道行旅路の嫁入

許嫁の力弥恋しさに、継母・戸無瀬と連れ立って東海道を旅して京都へ向かう小浪。

児太郎さんの小浪は古風な味があって、とても可愛い。

魁春さんの戸無瀬は、もともとおっとりした品の良さが魅力の方なので、意思の強い娘に引きずられるように旅に出たおっとりしたご婦人、という感じ。

お母さんっぽさは薄いかも…。

いつも思うのだけど、歩き方や座り方など身ごなしが本当に美しい。

 

九段目 山科閑居の場

今回のなかではここが一番の見せ場。

なんとか力弥と添いたいと願う小浪とその思いを叶えてやりたい戸無瀬。

遺恨ある間柄の家の娘を息子の嫁にはもらえない、と冷たく断るお石。

女同士の対決に戸無瀬の夫・加古川本蔵と、お石の夫・大星由良之助が加わって、女の世界と男の世界、情と義理、私と公、正と濁…、それぞれの抱える思いがぶつかりあい、緊迫したドラマが展開する。

 

魁春さんの戸無瀬はちょっとおとぼけな味があって、強い女というよりここでもやっぱり娘が可愛いおっとり母さんという雰囲気。

小浪に「力弥様と添えないのだったらいっそ殺して!」と言われるまでは、死ぬ覚悟はなさそうに見えた。

 

対する笑也さんのお石は、ただただ冷たく美しい。

姿も声も本当に美しいのだけど、一人だけくっきりはっきりで現代の人のよう。

 

そして一人ひそかに覚悟を決めて、山科の大星宅を訪れる幸四郎さんの本蔵。

役者としての幸四郎さんは好きなのだけど、歌舞伎役者としてはとても苦手…。

姿や声ははまっているし、その場に出るだけでぐっと舞台が引き締まる存在感は流石。

でもいつも台詞が一人よがりと言うか…、「自分だけ〜」の世界に入ってうっとり語っているような印象なので、いまいち共感できない。

幸四郎さんファンの方、ごめんなさい。

今回の加古川本蔵もその印象は変わらなかった。

 

梅玉さんの由良之助は、これまで幸四郎さん→吉右衛門さんと濃厚な役者さんのリレーが続いてきた後なので、お二人に比べるとあっさりさっぱりな由良之助。

穏やかで品があるところが魅力的。

 

ちょっと無理な配役もあるせいか、ドラマとしては薄い気がした。

児太郎さんの小浪と魁春さんの戸無瀬が死ぬ覚悟を決めて、いざ、というところまでが一番見応えがあり面白く観た。

 

十段目 天川屋義平内の場

由良之助の頼みに応えて、討ち入りのための武具類を調達した堺の商人・天川屋義平。

義平の店に捕物が現れ詮議をされるが、一人息子を人質に取られても、義平はしらを切りとおす…。

 

男気あふれる義平を歌六さんが好演。

討ち入りの計画がバレるのを防ぐため離縁した女房お園と一人息子の千吉を愛しく思う気持ち、けれどそれを抑えながら由良之助に義理をとおす男らしさ。

「天川屋義平は男でござる」の名台詞そのまま、本当にかっこいい男だった。

 

十一段目 高家表門討ち入りの場、高家広間の場、高家奥庭泉水の場、高家柴部屋本懐焼香の場、花水橋引揚げの場

 

討ち入りから本懐をとげ、主・塩谷判官が眠る菩提寺に向かうまで。

 

幕が開くと表門の前にずらりとそろった浪士たちの姿。

これだけでわくわくする光景。

雪の中での立ち回りは絵のような美しさ。

とくに奥庭泉水の場で、松緑さん演じる小林平八郎との立ち回りは迫力があった。

 

本懐を遂げたあとの焼香の場面では、本当にお焼香をあげていて香りが客席まで漂ってくるので、第一部で塩谷判官が亡くなったときの場面を思い出した。

あの場面での、秀太郎さんの顔世御前の、夫・塩谷判官を突然亡くした悲しみ…。

「この気持ち、推量してくれますね。」と由良之助にひと言もらしたときの悲痛な美しさ。

あのときから一年余。

これまで舞台で事の成り行きを見守っていたこちらにもぐっとくるものが…。

 

最後の花水橋引揚げの場は、朝日を浴びて、光り輝く一面の雪景色。

舞台手前から奥に向かってかかる橋を渡って、浪士たちがずらりとやってきて、花道をとおって菩提寺光明寺へと進んでいく、その姿が美しかった。

 

それにしても、挨拶をして花道を去っていく梅玉さんの由良之助、それを見送る左團次さんの桃井若狭之助。

この配役だけはどうにかならなかったのだろうか?

第一部から通しで観ていると、梅玉さんの塩谷判官をいびる左團次さんの高師直の場面が浮かんでしまって…。


三ヶ月通して観て、「終わった〜」という清々しい気持ちでいっぱい。

最初は「どうだろう?」と思うところもあったけれど、実際に舞台を観てみれば、月ごとにそれぞれたくさんの見どころがあって面白い企画だった。

たっぷりと忠臣蔵の世界を堪能した。

 

★Information
国立劇場開場50周年記念
通し狂言 仮名手本忠臣蔵【第三部】
12/2(金)〜12/26(月)

四幕八場
八段目 道行旅路の嫁入
九段目 山科閑居の場

十段目 天川屋義平内の場

十一段目 高家表門討ち入りの場

同 広間の場

同 奥庭泉水の場

同 柴部屋本懐焼香の場

花水橋引揚げの場

【主な配役】

本蔵妻戸無瀬…中村魁春

娘小浪…中村児太郎

加古川本蔵…松本幸四郎

由良之助妻お石…市川笑也

大星力弥(九段目)…中村錦之助

大星力弥(十一段目)…中村米吉

大星由良之助…中村梅玉

天川屋義平…中村歌六

女房お園…市川高麗蔵

寺岡平右衛門…中村錦之助

桃井若狭之助…市川左團次