増上寺の薪能
毎年9月の最終土曜日に開催されているという増上寺の薪能。
(※今年はカレンダーの並びの関係で10/1に実施)
御本尊である阿弥陀如来に奉納するために行われるもので、今年で33回目だそう。
ひょんなことからその存在を知り、体験してきました。
鑑賞にはチケットが必要で、指定席と自由席の2種類あり、指定席はさらに舞台に近いところからS、A、Bの3種類がありました。
外で行うものなので、雨天の場合は講堂内での蝋燭能になるとのこと。
そして指定席S席とA席までは鑑賞できますが、それ以外の席はチケット代金の払い戻しになります。
チケットの売り出しは例年、お盆の時期、8月15日頃からはじまるようです。
増上寺に直接買いに行くか、電話で申し込み、チケットを増上寺へ取りに行く、または着払いで郵送してもらうか、のいずれかです。
私は電話で申し込みして、後日、増上寺へチケットを取りに行きました。
すっかり出遅れてしまったので、購入できたのは指定のB席。
毎年大人気で、チケット発売日当日にはチケットを求めて長い列が出来るんだそうです。
そして当日。
心配だったお天気はなんとかもってくれました。
仏様に奉納するものなので、法会からはじまり、その後、能舞台前の薪にお寺の燈明から移した火を付ける、火入れの儀がありました。
日が暮れた後の舞台はこんな感じです。
秋の虫の鳴く中、三門と松の大樹を背景に、篝火のもとで演じられる能楽。
どこか異空間へ行って帰ってきたような、不思議な体験でした。
演目は次のとおり。
能「鶴亀」
※写真は入場時にいただいたパンフレットより。
以下、二演目の写真もおなじ。
新春をことほぐため、月宮殿にやってきた皇帝と臣下一同。
例年どおり、皇帝の長寿と天下泰平を願って鶴と亀が舞を奉納します。
その様子を見て興にのった皇帝も天下泰平を願ってひとさし舞います。
その後、臣下を引き連れて長生殿へと戻っていくのでした。
皇帝の登場する大変おめでたい舞で、鶴と亀をそれぞれ子どもが舞っていて可愛らしかったです。
狂言「萩大名」
長期間京都に滞在し、めぼしいところはあらかた観光してしまったので違うところに遊びに行きたいと、駄々をこねる大名。
太郎冠者は、萩の見事なお庭のあるお屋敷へ行ってはどうかと提案します。
ただ、ひとつ問題が…。
お屋敷の主人はとても風流人で、お庭を訪問した人には必ず和歌を一首所望するというのです。
和歌のたしなみなどない大名は「それなら行かない」と言いますが、語呂合わせで和歌を覚え、太郎冠者の合図をもとに思い出し、その場を乗り切ることにして、お庭を拝見しに出かけますが…。
教養のない田舎の大名をからかった演目です。
途中で太郎冠者がいなくなってしまい、キョロキョロと辺りを探しながら、その場しのぎの返答でなんとか逃れようとする大名が滑稽でおかしい。
主人が笑いの対象になっている、珍しいパターンでした。
この狂言の途中で雨がパラパラと降ったため、最後の能は後半部分のみ演じる半能に。
能「紅葉狩 鬼揃」
山中に鹿狩りにやってきた平維茂一行は、そこで紅葉を愛でる宴をしていた上臈に誘われ、座に加わります。
つい飲み過ぎてしまい、酔いつぶれて眠り込んでしまった維盛。
そこへ鬼の正体を現した女たちが襲いかかります。
鬼揃という特殊演出で演じられたそうですが、半能になってしまったため、いきなり舞台上にたくさんの鬼が現れ、維茂と戦うクライマックスからはじまり、残念ながらよくわかりませんでした。
最後が少し残念でしたが、なんとかお天気ももってくれて、とても貴重な体験をすることができました。
本来、能楽などの芸能は神仏への供物だったわけですから、「昔の人はこんなふうに味わっていたのかな?」という、その独特の雰囲気を体感することができ、これからの能楽鑑賞がより一層深まりそうです。
★Information
第33回 増上寺 薪能
10/1 17:30より
能 鶴亀
鶴 梅若千音世
亀 梅若万佐志
シテ 梅若万三郎
ワキ 森常好
ワキツレ 森常太郎
ワキツレ 舘田善博
アイ 山本則重
大鼓 内田輝幸
小鼓 幸信吾
太鼓 徳田宗久
笛 藤田次郎
後見 梅若泰志、中村裕
地謡 中村政裕、遠田修、古室知也、青木一郎、梅若久紀、伊藤嘉章、梅若雅一、八田達弥
狂言 萩大名
シテ/大名 山本則俊
アド/太郎冠者 山本則秀
アド/庭主 山本則重
能 紅葉狩 鬼揃
ツレ 梅若泰志
ツレ 長谷川晴彦
ツレ 青木健一
シテ 梅若万佐晴
ワキツレ 福王和幸
ワキ 村瀬慧
ワキツレ 村瀬提
ワキツレ 矢野昌平
アイ 山本則秀
アイ 若松隆
大鼓 内田輝幸
小鼓 幸信吾
太鼓 徳田宗久
笛 藤田次郎
後見 梅若雅一、中村裕
地謡 中村政裕、遠田修、古室知也、青木一郎、梅若久紀、伊藤嘉章、八田達弥、加藤眞悟