うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

Theatre:エトワール・ガラ2016 Bプログラム at Bunkamuraオーチャードホール

エトワール・ガラ2016のBプログラムを観てきました。

パリ・オペラ座のエトワールたちによるガラ公演です。

 

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今年2月にアデュー公演を終えたばかりのエトワール、バンジャマン・ペッシュのプロデュースによるもので、今年で5回めだそうです。
7年前に来日したときに観逃して、とっても後悔していたハンブルク・バレエ団の「人魚姫」。
1幕のパ・ド・ドゥをシルヴィア・アッツォーニ&アレクサンドル・リアブコの二人が踊るというので、どうしても観たくて。

 

以下、演目ごとに感想です。

 

●「ラ・シルフィード」より

振付:オーギュスト・ブルノンヴィル 音楽:ヘルマン・レーヴェンショルド

レオノール・ボラック&ジェルマン・ルーヴェ

 

二人の若さ溢れるキラキラした踊りが幕開きにぴったりで、仲良く楽しそうに踊るのを観ているだけで幸せな気持ちに。

衣裳が可愛くて、森を表現した緑の背景もよかったです。

 

●「ランデヴー」

振付:ローラン・プティ 音楽:ジョゼフ・コスマ

アマンディーヌ・アルヴィッソン&バンジャマン・ペッシュ

 

誘惑する女と期待する男。

途中までいい感じだったのに、最後は女に男がナイフでザクッとされてしまう、というフランスっぽさ満載の作品。

テクニックよりもどう雰囲気を出して魅せるかがポイントの作品。

バンジャマン・ペッシュが流石の表現力で魅せてくれました。

アマンディーヌ・アルヴィッソンもクールでコケティッシュなボブの女がはまっています。

街灯が灯る石畳の道。夜のパリをイメージしたセピアの背景も雰囲気を出すのに一役かっていました。

 

●「See」〈日本初演

振付:大石裕香 音楽:アルヴォ・ペルト(「アリーナのために」「鏡の中の鏡」より)

シルヴィア・アッツォーニ&アレクサンドル・リアブコ

 

振付の大石裕香さんはもともとハンブルク・バレエ団で踊っていたダンサーの方。

今は振付家として活動されているそうです。

プリミティブな民族衣裳のようなコスチュームに仮面をつけて踊る、太古の芸能を思わせる神秘的な雰囲気の作品。

何を表現しているのか、はっきりとはわかりませんでしたが、シルヴィアとサーシャ、二人の踊り、表現力がすごくて、独特の世界観にぐいぐい引き込まれていきました。

 

●「シルヴィア パ・ド・ドゥ」

振付:ジョージ・バランシン 音楽:レオ・ドリーブ

ローラ・エケ&ユーゴ・マルシャン

 

「これでもか!」と超絶技巧が盛り込まれた振付を軽々とエレガントに踊るエケが素晴らしい!!

薄い水色のクラシックなチュチュも似合っていて、素敵でした。

マルシャンもサポートはそつなくこなし、ソロのパートも軽やかに踊っていました。

彼は本当にハンサムだし、舞台映えしますね。

パリ・オペラ座、イチオシの若手男性ダンサーなの、納得です。

 

ロミオとジュリエット

第1幕より"マドリガル""バルコニーのパ・ド・ドゥ"

第3幕より"寝室のパ・ド・ドゥ"

振付:ルドルフ・ヌレエフ 音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

レオノール・ボラック&ジェルマン・ルーヴェ(マドリガル)

ドロテ・ジルベール&ユーゴ・マルシャン(バルコニーのパ・ド・ドゥ)

アマンディーヌ・アルヴィッソン&マチュー・ガニオ(寝室のパ・ド・ドゥ)

 

この3つの場面の踊り比べ、面白かったです。

 

ボラック&ルーヴェのペアはその若さを生かしたはつらつとした踊りが、二人の出会いの場面のときめきにぴったり。

この二人の並び、とても絵になります。

二人が踊る全幕の「ロミオとジュリエット」を観てみたい!と思いました。

 

続くジルベール&マルシャンのバルコニーの場面は、マルシャンのいささかおろおろした感じの初心なロミオと、可憐で愛らしいジルベールのジュリエットが、甘くロマンティックな雰囲気を作り出していました。

 

ラスト、寝室のパ・ド・ドゥだけは、あんまりぴんときませんでした。

どの場面もヌレエフらしく動きが密に詰まった難しい振付で、踊るだけでも大変だと思いますし、特にこの寝室のパ・ド・ドゥは難易度が高そうでしたが、振付をこなしているだけに見えてしまって…。

一番ドラマティックな場面のはずなのに、あっさりと終わっていきました。

 

●「病める薔薇」

振付:ローラン・プティ 音楽:グスタフ・マーラー(交響曲第5番 第4楽章)

エレオノラ・アバニャート&オードリック・ベザール

 

マーラーの音楽とウィリアム・ブレイクの詩「The Sick Rose」に触発されて、プティがプリセツカヤのために創った、とっても耽美な作品です。

私の大好きなプリマ、ロパートキナがこの作品をレパートリーにしており、何度か彼女が踊っているのを観ているので、どうしても比べてしまいます…。

ロパートキナに比べると、大分あっさりしていて、虫に食い尽くされて枯れていく怪しい美しさや死に向かっていく生の悶えのようなドラマがありませんが、アバニャートの「The・いい女」的なゴージャスなオーラは素敵でしたし、とても現代的なはっきりした踊りはそれはそれでよかったです。

 

●「人魚姫」第1幕よりパ・ド・ドゥ

振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:レーラ・アウエルバッハ

シルヴィア・アッツォーニ&アレクサンドル・リアブコ

 

ただただ素晴らしかった…。

どんな場面なのか、まったく知識がないにも関わらず、二人の踊りが創り出す世界に引き込まれてしまいました。 

袴のように裾の長い衣裳を、パタンパタンと独特の動きでさばきながら踊るアッツォーニが、海の中を自由に泳ぎまわる人魚姫に見えました。

なんていう踊りの魔法なんでしょう。

今年のハンブルク・バレエ団の来日公演を観るまで、こんなに素晴らしいダンサーがいることを知らなかったなんて…。

すっかり彼女のファンになってしまいました。

叶うことなら、アッツォーニが踊る「人魚姫」全幕を観たい…!!

 

●「それでも地球は回る」〈女性版世界初演

振付:ジョルジオ・マンチーニ 音楽:アントニオ・ヴィヴァルディ(「バヤゼット」より"私はないがしろにされた妻")

アマンディーヌ・アルヴィッソン

 

音に合わせてばしっ、ばしっと振付をきめていくアルヴィッソンが男前でかっこよかったのですが、公演プログラムを買っていないため、どんな作品なのかがわからずじまい。

何を表現しているのか、彼女の踊りからはまったく伝わってきませんでした。

 

●「With a Chance of Rain」より〈日本初演

振付:リアム・スカーレット 音楽:セルゲイ・ラフマニノフ(「10の前奏曲」op.23-5、op.23-6、「幻想的小品集」op.3-1"エレジー")

ピアノ:久山亮子

ローラ・エケ&オードリック・ベザール

ドロテ・ジルベール&マチュー・ガニオ

 

ピアノの生演奏にのせて踊られる作品。

男女のドラマが二組、続けて展開されます。

ところどころ、コミカルな場面もあったりして面白く見ました。

 

●「ル・パルク」より"解放のパ・ド・ドゥ"

振付:アンジュラン・プレルジョカージョ 音楽:W・A・モーツァルト(ピアノ協奏曲 第23番 K.488 第2楽章)

エレオノラ・アバニャート&バンジャマン・ペッシュ

 

ペッシュのパリ・オペラ座のアデュー公演で踊られたという作品。

ものすごくアクロバティックなリフトがあったりして、激しい振付です。

エレオノラ・アバニャートとバンジャマン・ペッシュの表現力豊かな円熟の踊りが印象的でした。

 

 

全体をとおして、ハンブルク・バレエ団のペア二人の素晴らしく濃密な踊りと、レオノール・ボラックとジェルマン・ルーヴェの今まさに伸び盛り!という若さ溢れる煌めきが印象に残りました。

今、一番充実しているときであろうはずのエトワールたちの踊りにはあまり惹かれませんでした…。
とても美しく上手いのですが、それ以上に惹きつけられる何かがなかったんですよね。
ひと世代前のエトワール、ルグリやリッシュ、ルテステュやデュポンには、舞台に出てきただけですぐわかる圧倒的なオーラと、その人ならではの個性あふれる踊りと雰囲気がありましたが、今のエトワールたちは総じてこじんまりきれいにまとまっている、という印象です。

今回出演していたエトワールの中で一番素敵だと思ったのは、ゴージャスな雰囲気ときっぱりした踊りのアバニャート。

彼女は好き嫌いがはっきり分かれるタイプのダンサーだと思いますが、彼女のように"ならでは"の雰囲気があって、「私はこう踊りたい!」という意思がはっきり見える、表現に貪欲なダンサーが私は好きなんだぁと思いました。

 

★Information

Bunkamuraオーチャードホール

エトワール・ガラ2016

Bプログラム

8/6(土) 14:00開演