Musee:ポンピドゥー・センター傑作展 at 東京都美術館
前回の若冲展の異常なまでの熱狂も過ぎ、普段の落ち着きを取り戻した東京都美術館で開催中のこちらを観てきました。
ポンピドゥー・センター傑作展
「Masterpieces from the Center Pompidou:Timeline 1906-1977」という英語タイトルのとおり、フランス・パリのポンピドゥー・センター所蔵の作品の中から、1906年から1977年に制作された作品を一年に一つずつ選んで並列に並べた展示です。
さらにひと作家一作品という決まりがあり、ピカソやマティス、デュシャンなどの巨匠であっても、展示されている作品はひとつだけ。
作品も、絵や彫刻、写真に映像、建築と幅広く、いい意味で「なんでもあり」なのが、モダンアートの美術館のコレクションらしいです。
展示コンセプトが秀逸なのに加えて、こちらの展覧会では作品を展示している空間構成がすばらしく、この空間を味わうだけでも足を運ぶに値すると思いました。
田根剛さんという、とても注目されている建築家が手がけられているそうです。
3階分の空間を使い、それぞれ赤、青、白をメインカラーとしてパネル類が作られていました。
それぞれの階のプランはこんな感じ。
直線、段々、円形と、フロアごとに異なる形で、自ずと鑑賞する側の気分や作品を見るテンポが変わるしくみ。
さらに作品とともに、それを創った作家の写真とプロフィール、言葉が添えられていて、まるで立体的な美術図鑑のよう。
パラパラと本をめくるのと同じように、好きなところから好きなように楽しむことができます。
誰もが知っている巨匠からマイナーなアーティストまで、とにかく一年ごとに並べられているので、自分の好きな絵の傾向が発見できたり、これまで知らなかった新たなアーティストとの予期せぬ出会いがあったりと、通常の展覧会にはない面白さがありました。
一番心をつかまれたのはチケットにも使われているマティスの「大きな赤い室内」(1948年)。
鮮烈な赤が主役の絵ですが、よくみると赤にも微妙なグラデーションや濃淡があって、その揺らぎによって二次元の平面が三次元の立体に見える、というマティスの魔法。
その魔法の鍵を握る赤の美しいこと!!
やっぱりマティスの絵は大好きです。
それ以外に強く惹かれたのは、チェコだったりロシアだったり、ヨーロッパの中心からは少し外れた国出身のアーティストの作品と、セラフィーヌ・ルイやフルリ=ジョセフ・クレパンなど、いわゆる職業画家ではなく、突然何かの衝動に駆られて描きはじめた人の絵でした。
1950年以降になると、理屈の方が先に立っている印象が強くて、私には見ていて辛く感じられました。
ですが、ルールに縛られずなんでもありの世界なので、こちらの方が好きな人もいらっしゃると思います。
普段、美術館やアートなどとは遠い生活を送っている方にこそ、オススメしたい展覧会。
ガチガチではなくゆるくアートを楽しみたい、アートな空間に身を浸したいと思っている方、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
★Information
ポンピドゥー・センター傑作展
6/11(土)〜9/22(木)