Musee:川端康成コレクション 伝統とモダニズム at 東京ステーションギャラリー
東京ステーションギャラリーで来週末まで開催されている、こちらの展覧会に足を運びました。
ノーベル文学賞を受賞した日本を代表する小説家、川端康成の蒐集した美術品のコレクションから、彼の創作の源となった美意識に迫ろうという試みです。
本棚や部屋のインテリア、服装を見れば、その人の人となりが伝わってくるように、好きな美術品もまた同じ。
川端康成が愛したもの一つひとつを見つめることで、川端康成の世界に誘われ、彼とひそやかな対話をしているような気持ちになりました。
幕開け、「第1章 川端コレクション モダニズムへの憧憬」では、亡くなる前の二年間という短い期間ではあるものの、濃密な交流をしていた古賀春江のシュールレアリスム絵画や、川端康成の書籍の装丁も手がけている東山魁夷の日本画、ロダンのブロンズ像などから、今をときめく草間彌生まで。
現在では古典の領域に入りつつありますが、川端康成が若かった頃はアヴァンギャルドな現代アートそのものだった芸術家の作品がずらりとそろい、川端康成の初期の小説たちはものすごくモダンで実験的な作品だったことを思い出させてくれるパートでした。
そして、「第2章 川端文学 文壇デビュー」は一昨年2014年に発見されて話題になった、初恋の人、伊藤初代さんが川端康成に送った手紙たちと、未投函の川端康成から伊藤初代さん宛の手紙1通がメイン。
真剣に結婚も考え、婚約までしたのに、一方的に破談にされた痛く苦しい恋。
大切に想いあっているのに、気持ちがすれ違ってしまう二人。
それぞれの気持ちが肉筆の手紙に生々しく滲んでいて、読んでいるこちらまで切なくなりました。
モダンでアヴァンギャルドから一転、この甘酸っぱい胸きゅんな世界。
あまりの振り幅のありっぷりにくらくらします。
が、続く「第3章 川端コレクション 伝統美への憧憬」もまたがらりと雰囲気が変わり、洋の東西、年代を問わず、彼の美意識にかなった品々が展示され、しずかな美しい世界へ。
ここに来てようやく「古き良き日本の美を文章という形にとどめてくれた人」という、多くの人が持っている川端康成のイメージらしい面が現れます。
縄文時代のハート型土偶から、与謝蕪村と池大雅の共作、国宝「十便十宜図」まで実に幅広いコレクションですが、その質の高さ、審美眼の確かさに驚かされます。
と同時に、こうした美意識を持っているからこそ、『雪国』をはじめとするあの美しい小説が紡げたのだと大いに納得しました。
最後の「第4章 川端文学 『雪国』以降」は、彼の創作活動がもっとも充実していた頃の作品の美しい装丁本や、仕事上のよきライバルであり、また友人でもあった文壇の人たちから川端康成に送られた手紙など、美術館ではなく文学館っぽい内容。
新潮社から彼の存命中に出版社された全集も展示されていたのですが、表紙を安田靫彦が手がけているんですね!!
なんという贅沢なコラボレーション。
安田靫彦以外にも、小林古径や東山魁夷などの名だたる大家をはじめ、多くの画家が彼の単行本の装丁や挿絵を手がけています。
第1章の現代アートのコレクションもそうですが、彼の人脈は本当に幅広く、いろんな人からその才能や人柄を愛されていたんだなぁと思いました。
ものを通して、川端康成の世界にどっぷりと浸ったひととき。
ところどころに散りばめられた川端康成の文章が美しく、鑑賞後には無性に彼の作品が読みたくなり、文庫本を一冊購入してしまいました…。
★Information
東京都千代田区丸の内1-9-1
4/23(土)〜6/19(日)