ミイラに貴賎なし
久しぶりに、父からメールが届きました。
「西域シルクロードに行ってきました」とのことで、添付されていた写真は安らかなお顔のミイラ…。
父よ、なぜ、久しぶりに娘に送るメールにミイラ?
普通のお嬢さん(もうすでに"お嬢さん"の年齢は過ぎ去っていますが…)なら、怒ってもおかしくないところだぞ。
などなど、ツッコミどころ満載ですが、もう私も大人ですから好意的に受け止めて、
「わ〜、すごいね!
このミイラ、やっぱりエジプトとかと同じで偉い人なのかな?」
と写真にもからんで返信を。
それに対する父からのメール。
「土葬されたのが、極度の乾燥地帯のため、ミイラになったようです。
したがってミイラに貴賎なし。」
どうやら西域シルクロードはどこもみな、カラッカラに乾いた土地で、普通に土葬したのにミイラになってしまうくらい過酷な気候というのが、父にとっては一番印象的だったようです。
しかし、それにしても。
「ミイラに貴賎なし。」
なんて含蓄のある言葉!
このひと言に、思わずぷっと吹き出しそうになりました。
たしかにミイラになっちゃうと、ぱっと見、男か女か、うんと年をとっていたのか、それとも若者だったのかはわかりません。
生前、どんなに偉かろうが、貧しかろうが、死んじゃえば関係なし。
"しゃれこうべ これも美人の なれのはて"
という江戸時代の戯れ唄にも通ずる目線。
そんなことを思って、父が送ってくれた、どこかほんわかした顔のミイラの写真をもう一度見ると、なんだか愉快な気持ち。
父ばかりを変な人あつかいできない…。
ミイラの写真を見て、「ふふふっ」となれる私も父といい勝負。
その後のメールのやりとりでは、普通に、西域シルクロードらしい山や砂漠の写真が送られてきました。
よかった…。