うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

満開の桜とかっこいい武人の舞〜能「田村」を鑑賞

友人と、能楽を鑑賞してきました。
国立能楽堂の三月 普及公演で、演目は狂言 空腕(大蔵流)と能 田村(喜多流)。

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能は一回、自分でチケットをとって観に行ったとき、最初から最後まで大変心地よい睡眠タイムになったため、苦手意識があって興味はありつつ避けてた分野。
あの頃より歳を重ねた今なら大丈夫かも、と思って、友人を誘って行ってきました。

今回の公演は能楽の普及を目的にしているので、最初の30分、能の演目にまつわる、研究者の先生のわかりやすい解説付き。
そして、演目も春、桜が満開の京都・清水寺が舞台で、お寺の縁起と創建者といわれる坂上田村麻呂の鬼退治の武勇譚を語る、華やかで勇ましく、わかりやすい話だったので、すっごく楽しめました。

今回、観たものと違う流派のもので、なおかつ装束も微妙に違いますが、後半の田村麻呂の武勇譚はこんな感じ。

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勇壮な音にのせて、くるくると舞う姿がとてもカッコよかった!!
「田村」は、勝修羅ものといわれ、祝言色の強いおめでたい曲だそうです。

能って、本当にシンプルな舞台なので、舞と謡、それに観てる人の想像力が加わって、どんな世界にでもなってしまう、すごい芸術ですね。
よく言われることですが、実際に舞台を観に行って感じました。
前半の童子、そして後半は坂上田村麻呂を演じるシテ方の、小さな体から出てくる地の底から響いて全体に広がっていくような深〜い声。
笛に大小の鼓、そして謡に舞が加わることで、世界がわ〜っと広がって、最後の場面では劇場内に鬼を蹴散らす千手観音が出現していました。
(あくまでも、想像の目で観ると、ですが…)

狂言「空腕」は能よりももっとわかりやすく、親しみやすく、肩の力を抜いて気軽に楽しめました。
予習しなくても言葉が聞き取れて、話の筋はわかるし、面白く観られるのがいいですね。
本当は臆病者なのに、偽の腕自慢をする家来の太郎冠者がおかしいお話でした。

今回驚いたのが、国立能楽堂のそれぞれの座席の背面に液晶モニターが付いていて、上演内容に合わせて文字で解説が表示されること!
こんな感じです。

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※写真は平成28年度 国立能楽堂主催公演予定表のパンフレットから。

無料で誰でも利用できるし、日本語だけでなく、英語モードにもできます。
伝統芸能を楽しむうえで一番高いハードルは、「なにを言ってるのか、理解できない」という言葉の問題だと思うのですが、このサービスは素晴らしいと思いました。

国立劇場での歌舞伎や文楽公演、そして松竹も、国立能楽堂を見習って、有料のオーディオガイドで小銭を稼ぐんじゃなくて、希望者には無料で貸し出して、少しでもファンを増やす努力をしたほうがいいのではないでしょうか…。
英語も、劇場に足を運んでくれている外国人もちらほら見かけますし。
日本という国そのもののファンを増やす絶好のチャンスでもあると思うんです。

庶民の娯楽だった文楽、歌舞伎と違って、能は支配層だった武士の嗜みとして続いてきた背景があって、もっとも上品で敷居の高い印象がありましたが、今日一日でものすごくイメージが変わりました。
いいですね〜、お能!!


最近、その存在を知って気になっている漫画。
能楽師の少年が主人公。

花よりも花の如く (1) (花とゆめCOMICS)

花よりも花の如く (1) (花とゆめCOMICS)


★Information

国立能楽堂三月公演 普及公演
解説・能楽案内 春の「勝修羅」ー「田村」と清水寺縁起

狂言大蔵流】 空腕
シテ/太郎冠者 大藏千太郎
アド/主 大藏基誠

能【喜多流】 田村
前シテ/童子 後シテ/坂上田村麻呂 大村定
ワキ/旅僧 高井松男
ワキツレ/従僧 梅村昌功
ワキツレ/従僧 野口能弘
アイ/清水寺門前の者 善竹大二郎
松田弘
小鼓 曽和鼓堂
大鼓 亀井実
後見 内田安信、谷大作
地謡 塩津圭介、内田成信、友枝真也、塩津哲生、佐々木多門、香川靖嗣、大島輝久、友枝雄人