うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

Musee:プラド美術館展 ースペイン宮廷 美への情熱 at 三菱一号館美術館

終了してから大分日が経ってしまいましたが、三菱一号館美術館で「プラド美術館展ースペイン宮廷 美への情熱」を観てきました。

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ポスターの絵は、ムリーリョの「ロザリオの聖母」(1650〜1655年)

スペイン王家のコレクションがもとになっているプラド美術館
コレクションの中でも小品を中心に、15〜19世紀のスペイン、フランドル、イタリア、オランダ、フランスの5か国の美術の流れを概観できる展覧会です。

展覧会の構成は下記のとおり。
Ⅰ.中世後期と初期ルネサンスにおける宗教と日常生活
Ⅱ.マニエリスムの世紀
Ⅲ.バロック:初期と最盛期
Ⅳ.17世紀の主題:現実の生活と詩情
Ⅴ.18世紀ヨーロッパ宮廷の雅
Ⅵ.ゴヤ
Ⅶ.19世紀:親密なまなざし、私的な領域

エル・グレコ、ムリーリョ、ベラスケス、ゴヤをはじめ、名だたる画家の作品もちらほらの、充実した内容でした。

この展覧会の魅力はなんといっても、小さな作品が多いこと。
遠くから眺めないと全体像がつかめない大きな絵と異なり、ぐっと近寄ってじっくり見ることができるので、繊細な色使いや筆跡など、画家たちの創作の軌跡がたどれるような気持ちになります。

冒頭からこれでもか!と、貴重な板絵(大変デリケートなため、扱いが難しいのです。)が続き、「よくぞ遠路はるばる運んできてくださった!」と感激しました。

まず目にとまったのは、一枚の板の表と裏に描かれた、聖カタリナの伝説の画家「聖母の婚約」と「苦しみのキリスト」(1470〜1500年)です。
裏面に描かれた、キリストが流す血や涙がとてもリアルで、手を伸ばして拭ってあげたい気持ちに駆られました。
携帯用の祭壇画として描かれたらしいのですが、その小さいサイズ感が生かされていて、すばらしく印象に残る作品でした。

そして、やはりボス。
世界で20点しか存在しないというヒエロニムス・ボスの作品。
そのうちの一つ、「愚者の石の切除」(1500〜1510年頃)がやってきていました。

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ちょっと見辛くて恐縮ですが、ネーデルラント(※現在のオランダとベルギーにまたがる地域)では、頭の小石が大きくなると愚か者になるので、それを取り除く手術が必要だと考えられていたそう。
この絵は、椅子に縛り付けられている男の人から、まさにその"愚者の石"を取り除く手術をしている場面が描かれています。
ただ、そこはやはりボスですから、一筋縄ではいかないヘンテコな空気が画面全体に充満しており、この手術、無事に終わりそうにありません。

続いて、時代はバロックへ。
ここではティツィアーノ・ヴェチェッリオの「十字架を担うキリスト」(1565年)に目を惹かれました。
頭にかぶった荊の冠の棘に刺され、頭から血を流しながら、重い十字架を背負うキリスト。
ぐっと寄った上半身のみが描かれ、顔をこちらに向けてなんともいえない目で私たちを見つめてきます。
決して媚びているわけではなく、ことさら哀れを誘おうとしているわけでもない、絶妙の表情。
そのキリストのなんともいえない表情がすばらしく、ものすごく気持ちをつかまれました。
ティツィアーノの絵はどれもとてもアピール力が強いですが、特にこの絵にはすごい吸引力があります。

本物そっくりに描いて、この世の儚さを強調する静物画。
いわゆるヴァニタスも充実していました。
なかでも印象的だったのは、フアン・バン・デル・アメンの「スモモとサワーチェリーの載った皿」(1631年頃)。

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お皿、スモモ、サワーチェリーとそれぞれの質感の描写が見事。
とくにルビーのように透き通って輝くようなサワーチェリーが美しかった…。

そして、驚きだったのはこの展覧会のメインビジュアルに使われていたこちらの絵のモデル!

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アントン・ラファエル・メングス「マリア・ルイサ・デ・パルマ」(1765年)

この美しい女性、ゴヤが描いた有名な王族の皆様の集団肖像画「カルロス4世とその家族」でガマガエルのような醜い姿に描かれている王妃様、まさにその人なのですよ!
Before→Afterのあまりの変わりっぷりにびっくり。

と、特に印象に残った絵をつらつらあげましたが、この展覧会を見たときは精神的に疲れていたのか、ほわ〜んとした幸せな気持ちにさせてくれた、いくつかの聖母子像が一番よかったです。

この「プラド美術館展」、お土産コーナーが大充実で、とくに面白かったのが美術展のお土産の定番、ポストカード。
通常、ポストカードといえば1枚売りですが、こちらのカードは絵の全体と一部分のアップ、2枚1セットで販売されていました。
でもお値段は1枚分と変わらないという、一度で二度美味しいポストカード!
実際に1セット買い求めたのですが、こんな感じ。

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ダーフィット・テニールス(2世)「猿の画家」(1660年頃)。
上が全体、下が一部分のアップです。
申年にちなんで購入しました。

小さな絵ならではの細部までじっくり味わえる美術展のウリにちなんで作られたポストカードだそうですが、面白いアイディアですよね。

そのほか、甘いものに目がないのでスペイン菓子も買ってしまいました。

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アーモンドの粉が使われた、ほろほろ食感のクッキー、マンテカードとポルボロンです。
そもそも違うお菓子らしいのですが、どちらもそっくりで…。
違いのわからない女でごめんなさい。

入館料1700円という設定にびっくりしたのですが、それも納得。
質、量ともに大充実の展覧会で、とてもよかったです!
いつか、本家のプラド美術館へも行ってみたいものです。

★Information
三菱一号館美術館
東京都千代田区丸の内2-6-2

プラド美術館展ースペイン宮廷 美への情熱
2015年10/10(土)〜2016年1/31(日)