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うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

Musee:肉筆浮世絵 美の競艶 at 上野の森美術館

アート
2016年の美術館はじめは、上野の森美術館の「肉筆浮世絵 美の競艶」でした。

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アメリカ・シカゴのコレクター、ロジャー・ウェストン氏所蔵の肉筆浮世絵のうち、優品130点ほどが里帰り。
"浮世絵師が描いた江戸美人100選"のサブタイトルに負けず、ずら〜っと、"女、女、女…"。
女性ばかりの絵が続く、見応えのあるボリュームたっぷりの展示です。
こんなに女の人の絵ばっかり見たのは、初めてかもしれません。

"肉筆浮世絵"は、鮮やかな色彩で摺られた浮世絵版画と区別して、絵師が絹や紙に筆で直接描いたものを呼ぶそうです。

江戸初期から明治まで、時代の流れにそって7章で構成されています。
第1章 上方で展開した浮世の絵
第2章 浮世絵の確立、江戸での開花
第3章 浮世絵諸画派の確立と京都西川祐信の活動
第4章 錦絵の完成から黄金時代
第5章 百花繚乱・幕末の浮世絵界
第6章 上方の復活
第7章 近代の中で

一応、流れはありますが、解説は最小限。
濃い密度で展示された膨大な作品を、難しいことは考えず、「どの絵が好みかな〜」と次から次へと感覚的に楽しんで観ていくのが楽しい展示だと思いました。

それぞれの絵師の個性や、絵師が活躍した時代、地域(江戸か上方か)などを反映して、顔のタイプや体型、お化粧、着物から描き方まで、さまざまなバリエーションがあります。

そして、どの美人も、基本的にすべて軸装されているんですよね。
※数点ですが、巻物や屏風の作品もあり。
その軸装の豪華なこと!
刺繍の入った布などが使われているなど、絵と同じくらい凝っています。
どんな人が持っていて、どんな風に家に飾っていたのかを想像するのも楽しかったです。

今回、展示ケースに使っているアクリルパネルや照明は最新のものが使われているとのことで、より間近で見るのに近い環境で絵を楽しむことができました。
パネル越しでも、反射したり歪んだりすることがなく、どの絵も絵師の絵の具の塗り跡が見えるくらい、細かいところまではっきり見えるんです!
絵の保存状態もいいので、絵師がそれぞれに技を駆使して描いた着物の色や柄が鮮やかで、その美しさを存分に堪能しました。

ここから、展示作品の中で特に印象に残ったものをいくつかご紹介。

「江戸風俗図巻」菱川師宣(元禄年間 1688〜1704年頃)
「見返り美人図」で有名な師宣の作品。
江戸の庶民のお楽しみ、中村座の歌舞伎芝居と隅田川での船遊びが、師宣らしい優美でおおらかな筆で生き生きと描かれています。
本当に楽しそうで、一緒に遊びたくなってしまう絵です。

「路上風俗図巻」宮川長春(享保年間 1716〜1736年頃)
※後期のみ展示
肉筆画の名手として有名な画家だそう。
操り人形や歌舞音曲など、旅芸人が家々を訪れて芸を披露している図。
細かいところまで描きこまれた繊細な絵で、その場の雰囲気まで伝わってくるようでした。

七福神吉原遊興図絵巻」鳥文斎栄之(文化年間 1804〜1818年)
題名どおり、画面左側では七福神が吉原で遊んでいます。
右は日本橋の手前あたりからずーっと川と街道、そして神社仏閣が描かれて、吉原までの道中の図。
道を行く荷物の中に打出の小槌や鯛といった七福神たちの持ち物らしきものがあって、「くすっ」と笑いを誘います。

「時世粧百姿図」初代歌川豊国(文化13年 1816年)
御殿女中など身分の高い女性から、夜鷹まで、あらゆる階層の女性たちがさまざまな場面で描かれています。
全24葉の連作ですが、一部展示替えがあって全点は展示されていませんでした。
どれもこれも手が込んでいて、美しい絵です。
びっくりしたのは、品川宿の遊女たちの絵。
お客が残したとおぼしき蟹にむしゃぶりついていたり、欄干に腰掛けて足をぼーんと上に投げ出していたり、お行儀の悪いこと。
遠くには海が広がり、帆船が浮かんでいました。

「京伝賛遊女図」葛飾北斎(寛政末年 1798〜1800年頃)
「大原女図」葛飾北斎(寛政末年〜享和年間 1798〜1804年頃)
二幅とも細部まで丁寧に描かれている他の絵とは一線を画す、墨でざっと描いた絵。
でも、これがとっても素敵でした。

ラスト。
私が一番好きだった美女。

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「美人愛猫図」葛飾北斎(享和〜文化年間 1801〜1818年)
少し寂しげにうつむく女と猫。
どうも私は北斎の描くあっさり顏の女性が好きなようです。
幸薄そうな雰囲気があるのに惹かれるんですよね…。

大変盛況で、常にたくさんの人が会場にいましたが、人は流れているので、そこまでストレスはなく楽しめました。
来週いっぱいで終了してしまいますが、保存状態のよい肉筆浮世絵を、これだけまとまった数、近くでじっくり観られる機会はそうそうないと思うので、お時間があればぜひ足を運んでみてください。

おまけ…。
美術館近くに「十月桜」の木があって、花を咲かせていました。

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★上野の森美術館
東京都台東区上野公園1-2

肉筆浮世絵 美の競艶
2015年11/20(金)〜2016年1/17(日)