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うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

Musee:根津青山の至宝 at 根津美術館

東京・南青山にある根津美術館で、昨日11/3(火・祝)までの開催。

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"鉄道王"と呼ばれた根津嘉一郎(号:青山、1860〜1940)が集めたコレクションのうち、選りすぐりのものだけが見られるという展覧会でした。

嘉一郎の収集は書画からはじまり、やがて茶道具へ。
そして、古来より大切にされ守り継がれてきた古美術品がかえりみられることなく、欧米に流出していくのに心を痛め、ますます蒐集に励んで行ったそうです。
彼が心血を注いで一代で築き上げたコレクションには、国宝や重要文化財が多く含まれていて、その眼力の確かさと数々の優れた古美術品の海外流出を防いだ功績はあまりあるものがあります。

そんな嘉一郎のコレクションが、品物ごとに5つのパートにわけて紹介されていました。

コレクションの形成と茶の湯ー唐物道具から侘茶の道具へー
仏教美術の蒐集
神仏を崇拝する精神の形
中国古代の青銅器
ヨーロッパを魅了した方盉を中心に
古経同好会
美術館構想につながる自邸での展観
永久訣別の茶会
初代嘉一郎渾身の取り合わせ

そのコレクションの対象となった品物の幅広さは、チラシの裏に掲載された代表的な出品からも汲み取っていただけるかと。

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この写真の上段、右から二つ目の硯箱。
室町時代につくられ、花白河蒔絵硯箱という名で呼ばれているのですが、これを当時16,500円という破格の値段で嘉一郎が競り落としたことから、コレクターとして古美術品蒐集家の間で、彼の名が一目置かれるようになった記念の一品だとか。

そのほか、ものすごい品々ばかりがずらりと並んでいるのですが、私のお目当ては国宝 那智滝図。
これを見るために足を運んだといっても大袈裟ではありません。
熊野の御神体の一つ、那智滝
その姿を描いた、現存するたった一枚の絵です。
チラシの左上に掲載されていますね。

実際の絵はかなり縦に長く、そこにすーっと流れ落ちる滝の水が描かれていて、上から下へ流れるエネルギーそのものを画面にばちっと閉じ込めてしまったかのようでした。
今回の公開にあたって、照明をかなり工夫したとのことで、流れ落ちる滝の水がきらきら光って見えて、その神々しいこと!
また、水の流れの激しさも伝わってきて、なんともいえない力を感じます。
さらに周りに生える杉木立、その幹にむす苔や打ち付けられた木札、滝の上にそびえる山と山に昇る日?あるいは月のように見える丸いものなど、細かいところまでよく見えます。
いつまでも眺めていたい、荘厳な景色がそこにはありました。

そのほか、印象に残ったものをいくつか。

まず、茶道具。
唐物肩衝茶入 銘 松屋
この茶入は代々の所有者が大切に引き継いできたもので、付属品として、仕覆(茶入などを入れるための袋)が4つ残されており、茶入とともにこの仕覆や茶入が入っている箱などが一緒に展示されていました。
4つある仕覆は、珠光、千利休、織部、小堀遠州と錚々たる茶人に由来するとされるもの。
袋に使われた布地にそれぞれの個性が滲んでいて、大変興味深い展示でした。

続いて、経。
こちらは国宝になっている二つをはじめ、どれも奈良時代平安時代に書かれた大変貴重なお経ばかり。
中には、平安時代に奈良の春日大社に奉納するために数々の要人から寄進を受けて書写した大般若経540帖+一巻と、お経を納めるための厨子なんていうすごいものまで。
丁寧に美しく書かれた文字を一つひとつ見ていると、とても厳かな気持ちになります。
間違えないように集中しながら、祈りを込めて一文字一文字綴っていく。
その地道な作業を思うと、胸があつくなります。
今は紙も書くものも豊富にあるから、私たちは気軽に文字を書いていますが、本来何もない紙に文字をしたためていくというのは、思いを刻み込んで形にしてゆく、神聖な行為だったはず。
そんなことを思いました。

そして、最後は中国古代の青銅器。
紀元前13〜12世紀に作られたものを中心に展示されていました。
ここでは、当時の中国の人々の金属加工の技術の素晴らしさ、そして想像力あふれる造形美に圧倒されました。
これまでも何度か根津美術館に来るたびに、同じような品々を見ていたはずなのに、見ているようできちんと見ていなかったんですね…。
細かい図像までとても凝っていて、見れば見るほど面白い。
いや〜、素晴らしかった!!

本当に隅から隅まで素晴らしいものばかりで、鑑賞後はお腹いっぱい。胸いっぱい。
これだけのものを私財を投じて集め、海外への流出を防いでくれた嘉一郎さんに日本人として、ただただ感謝。
本当にありがとうございます。

個人のコレクションが中心なので、年代や作家などの流れやまとまりがみえず、通常の美術館で使われる枠組みから少し離れた展覧会になっていました。
しかし、一見ばらばらに見える品々も、全体を通してみるとコレクター嘉一郎さんの美意識や好みのようなものが伝わってきます。
見ていると、端正な美しさを湛えた品が多く、奇をてらったり荒々しかったりするものはあまり好みではないよう。
そういった面からも、興味深い展覧会でした。

鑑賞してヒートアップした頭を冷やすために、美術館の外、庭園内に設けられたNEZU CAFEでお茶を。

バームクーヘンとコーヒーのセット。

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コーヒーカップにもお皿にも、根津美術館所蔵のお宝、尾形光琳作、燕子花図屏風からのかきつばたが。
このカフェからは庭園の美しい緑が楽しめて、大好きな場所。
秋の色が強くなってきた庭を眺めながら、思う存分、ぼーっとしました。

★Information
東京都港区南青山6-5-1
Tel  03-3400-2536

財団創立75周年記念特別展
根津青山の至宝
ー初代根津嘉一郎コレクションの軌跡ー
9/19(土)〜11/3(火・祝)