うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

Livre:中野京子『はじめてのルーブル』(集英社、2013)

「怖い絵」シリーズで有名な、中野京子さんが解説する、ルーブル美術館所蔵の名画たちです。

「怖い絵」シリーズでいかんなく発揮されている、中野さんの美術だけにとどまらない幅広い分野での博学ぶり、そうした知識を好奇心をそそるようにさらりと面白く読ませる手腕は健在です。

中野さんの文章は、テーマの展開が明確で、とっても読みやすくわかりやすい。
高貴な人たちの恋愛事情とか、世俗的な成功を収めてこの世の春を謳歌したのにそれもつかの間、どん底に突き落とされる人の生き様とか、エグくて俗っぽいことが、さらりとしかし深く書かれているので、ついつい先が気になってぐいぐい読み進めていってしまいます。

ここで取り上げられている絵画は「怖い絵」シリーズに登場したものは避けたとのことで、「あれっ、この絵がないなんて」という名画も中にはあります。

この本で取り上げられている絵は全部で17枚。
ダヴィッド『ナポレオンの戴冠式
ヴァトー『シテール島の巡礼』
クルーエ『フランソワ一世肖像』
レンブラント『バテシバ』
プッサンアルカディアの牧人たち』
ルーベンス『マリー・ド・メディシスの生涯〈肖像画の贈呈〉』
ボス『愚者の船』
グルーズ『壊れた甕』
ムリーリョ『蚤をとる少年』
ティツィアーノ『キリストの埋葬』
作者不詳『パリ高等法院のキリスト磔刑
アンゲラン・カルトンアヴィニョンピエタ
カラヴァッジョ『聖母の死』
ヴァン・ダイク『狩り場のチャールズ一世』
ラファエロ『美しき女庭師』
アントワーヌ・カロンまたはアンリ・ルランベール『アモルの葬列』

『怖い絵』シリーズで取り上げた絵は除いたとはいえ、それでもすごいラインナップ。
あらためて、ルーブルの所蔵品の層の厚さが思い知らされますね。

地域や時代に幅を持たせたかったということで、たしかにこれをざっと読むことで時代や地域による絵画のムードの違いをつかむことができます。
自分がどんな絵画や画家が好みなのか、探ってみるのにいい一冊かもしれません。

私は『パリ高等法院の磔刑』と『アヴィニョンピエタ』、二枚の中世の宗教画が面白いと思いました。
昨日、『芸術新潮』の特集号を購入したグリューネヴァルトしかり、今、自分の中ではヨーロッパ中世のブームがきているようです。

はじめてのルーヴル

はじめてのルーヴル