Musee:大英博物館展 100のモノが語る世界の歴史 at 東京都美術館
会期が終わる前に行かなくちゃ!
もともとイギリスのラジオ番組としてスタートし、展覧会まで企画されたようです。
終了間際に駆け込みシリーズ第二弾。
大英博物館の800万点!にものぼる収蔵品のなかから、100点を選び、モノから人類の歴史を見てみよう!という壮大なコンセプトをもとに構成された展覧会です。
これ、チラシを見たときから「面白そう!」と思ったんですよね。
どんなモノを選び、どんな順序で見せるのか?
キュレーターの力量がはっきり出る、難易度の高い、チャレンジングな企画だな〜と。
冒頭に置かれたのは、200万年ほど前に人類が初めて作った道具、礫石器。
はじめは石を割って鋭い面を作っているだけの、かなり素朴なもの。
これで動物の骨を割り、中にある髄を食べることで高カロリーな食物を手に入れていたそう。
それが脳の巨大化につながったのだとか。
その後、槍や籠、土器など、次々と生み出されていった道具たちが展示されていきます。
ラストはソーラーパネルと充電器。
現在、世界中の電気なしで生活している家族のために、開発された道具です。
彼らが夜も電気が使えることで日が暮れてからも勉強できたり、インターネットを使ってさまざまな情報を集められるようになったら、自らの手で生活を大きく変えることができますよね。
初めての道具は自らが生き延びるための必需品として生み出されたものでしたが、200万年後、人類は自分よりもより弱い立場に置かれている人々を助けるために、新たに道具を生み出すようになっているところまで来たのです。
今回、印象に残ったのは、どれも戦争にまつわるものでした。
やはり全体を通してみると、人類の歴史は常に集団同士の戦いの歴史でもあるのだなと感じさせられます。
まず展覧会の目玉である、ウルのスタンダード。
何のために作られたのか、詳細は不明だそうですが、一面は王を中心とした宴の場面、王に魚や牛などの貢ぎ物を捧げにやってくる人々など、平和な場面が、ラピスラズリや貝片など、貴重な材料を贅沢に使って、とても緻密なモザイクで描写されています。
そして、反対面は一転、戦争の場面。
敵兵を踏み倒して走る戦車、縄をかけられ捕虜になった兵士、王の前に連れ出される人々など、戦いの様子が生々しく表現されています。
平和を享受できるのも、圧倒的な軍事力で周辺の国々を征服しているからこそ。
努力なくして平和なし。
平和の裏には、おびただしい量の血が流れている。
このスタンダードには、そんな真理が表わされているように思いました。
残りの2点はどちらも現代から。
アフガニスタンの戦争柄絨毯と、銃器で作られた「母」像。
前者は1979年〜1989年まで続いたソビエト連邦の侵攻の様子が絨毯の柄になっているもの。
鬼のように角を生やした人物として表現されたソ連兵を踏み倒していく戦車や、爆弾を落とすヘリコプターなど、およそ絨毯の柄にはふさわしくないモチーフが、素朴な手仕事の雰囲気を残した絨毯に織り込まれています。
後者はモザンビークで長年続いた内戦が終わった後に残された700万丁もの銃を、ミシンや包丁など役立つものに変えようというプロジェクトが行われました。
その一環として、アーティストが廃棄された銃を使って作成した女性の像です。
今も内戦が続く地域が世界のあちこちにありますが、その生々しさを雄弁に物語るモノです。
実際モノを前にすると、有無を言わせず圧倒的な存在感で迫ってきます。
人類の歴史を考えると、争いのない平和な時代の方が貴重。
日本にいるとあまりに平和すぎてついつい忘れてしまいがちなことですが、暴力や争いといった負の部分も、まぎれもなく我々人類が抱えている本性の一部なのだと実感させられた展覧会でした。
★Information
東京都台東区上野公園8-36
Tel 03-5777-8600
100のモノが語る世界の歴史
4/18(土)〜6/28(日)
公式カタログ
- 作者: 大英博物館
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2015/03/24
- メディア: 大型本
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こちらはそのラジオ番組を書籍化したもの。
- 作者: ニールマクレガー,Neil MacGregor,東郷えりか
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2012/04
- メディア: 単行本
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