うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

Livre:カズオイシグロ『忘れられた巨人』(早川書房、2015)

発売されたばかりのカズオ・イシグロの最新作。

物語の舞台は、昔々のイングランド
ぼんやりとした霧で覆われて、人々は起こった出来事をどんどん忘れ、記憶をなくしたまま日々を過ごしています。

崖に横に穴が開けられて、まるで動物の巣のような形で家がつながっている集落に住む老夫婦アクセルとベアトリスは、別の村で暮らす息子を訪ねるため、旅立ちを決意します。

二人の旅路には、戦士、鬼に傷を付けられ、そのために呪われたとされて命を狙われる少年、人々に恐れられている雌竜、その竜退治を命じられたアーサー王の騎士などが登場し、昔の騎士物語そのままの世界が広がっています。

真実を追い求めて旅をする、壮大な冒険譚ともとれるのですが、大きな目で見ると、これはアクセルとベアトリス、長年連れ添った老夫婦の壮大なラブストーリーかなと思います。

アクセルは妻であるベアトリスのことを常に"お姫様"と呼んで、とっても大切にしています。
そして、年老いた身には辛すぎる旅路も労わりあいながら、絶対に離れ離れにならないようにお互いを見つめながら進んでいく仲睦まじい夫婦なのですが、そんな彼らにも長年連れ添った間には、いろいろ諍いもあったようで…。

愛し合い、寄り添い合いながら、そしてときには対立し、憎み合いながらも、二人で一つの人生を生きる。
夫婦とは? パートナーシップとは?を 考えさせられました。

私は独身なのでなんとも言えませんが、自分の両親や結婚している友人たちを見ていると、本当に夫婦という関係は難しく、深い関係なのだなとしみじみ思わされます。

いろいろ大変そうですが、やっぱり結婚して夫婦というものを味わってみたいなと、結婚についての自分の気持ちも再確認しました。

忘れられた巨人

忘れられた巨人