うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

誰でもヒーローになれる可能性を秘めている〜ジョーゼフ・キャンベル×ビル・モイヤーズ『神話の力』

最初から最後まで、知的好奇心が刺激されっぱなしだった本。
ジョーゼフ・キャンベル ビル・モイヤーズ 飛田茂雄訳『神話の力』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫、2010年)

神話学の権威ジョーゼフ・キャンベルとジャーナリスト、ビル・モイヤーズが神話をテーマに対談したTV番組がもとになっています。

映像を文字起こしし、テーマごとに整理して一冊にまとめたもので、テレビ番組は日本でも地上波で放送されたそうです。

ジョーゼフ・キャンベルは世界各地に存在する神話を集めてその物語の構造を分析し、神話に共通するエッセンスを明らかにした人です。

キャンベルの神話研究の成果を取り入れて、ジョージ・ルーカスはあの「スターウォーズ」の世界観やストーリーを作ったと言われています。

冒頭の「人間が本当に探求しているのは、たぶん生命の意味ではありません。人間がほんとうに求めているのは、〈いま生きているという経験〉だと思います。」からはじまり、含蓄のある言葉の宝庫で、気になったところに付箋を貼りながら読んでいたら、ふっさふさになりました。

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この本には「よく生きる」ためにはどうしたらいいのか、探求し続けてきた人間の智慧が詰まっています。

彼が熱く語るのは、自分の心が喜び、満たされることを追求すること。自分の中心とつながること。
真に自分自身とつながることができたとき、それは世界の中心と、この世を構成するあらゆるものとつながっているのだ、と彼は言います。

自分の中に深く降りていき、世界の中心とつながろうとすると、どんなことを経験するのか。
その過程こそが数々の神話に描かれている英雄たちの冒険、ヒーローズジャーニーなのだと。

そして、それは私たちの誰もが、真の幸福を味わうためには必ず通らなければならない道だとも語っています。

そう、英雄とは決して選ばれた人ではありません。幸せになりたいと望み、それに向けて行動するならば、人は誰でもヒーローなのです。

このほかにも、愛や結婚、この世の悲しみ、何かのために犠牲になることなど、さまざまなテーマについて、キャンベルが長年にわたる神話の研究から汲み上げた、宝石のようにキラキラした思考を惜しげもなく語ってくれています。

人生についての励ましやヒントがほしいとき、そっとページをめくってみると、きっとあなたの心に刺さる言葉があるはずです。

神話の力 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

神話の力 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)