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うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

Musee:グエルチーノ展

ゴールデンウィークに、上野の国立西洋美術館で開催中の「グエルチーノ展」を観に行ってきました。

 
グエルチーノはイタリア・ボローニャ近郊の町、チェントでその生涯のほとんどを過ごした、イタリアのバロック美術を代表する画家です。
 一世を風靡した彼の絵は、一時期アカデミックな絵画のお手本とされていました。
 
バロックってなに? と思われた方。
美術って、時代の空気を反映して、そのときどきの特徴や流行りがありますよね?
バロックもそのひとつで、16世紀末から17世紀初頭にかけてイタリアで誕生し、18世紀後半までヨーロッパで流行した美術のひとつのスタイルをいい、明暗くっきり、動きのあるドラマティックな構図、鮮やかな色づかいなどを特徴としています。
同時代の画家としては、レンブラントルーベンス、そして彼のライバルでもあったグイド・レーニなどがいます。
 
日本ではあまりなじみのないバロック、グエルチーノという画家をテーマに今回展覧会が開かれることになったのは、2012年5月にチェント市を襲った地震がきっかけだそう。
グエルチーノの数々の作品を所蔵しているチェント市絵画館も被災し、そのあまりにも甚大な被害に再開のめどがたっていないとのこと。
そこで国立西洋美術館が震災復興事業の一環として作品を借り受け、グエルチーノをテーマにした展覧会を企画開催。
収益の一部は絵画館の復興にあてられるそうです。
 
前置きが長くなりましたが、グエルチーノの絵の話に入りましょう。
 
展覧会は5部からなり、ほぼ時系列に沿って作品が紹介される構成でした。
Ⅰ 名声を求めて
Ⅱ 才能の開花
Ⅲ 芸術の都ローマとの出会い
Ⅳ 後期①聖と俗のはざまの女性像―グエルチーノとグイド・レーニ
Ⅴ 後期②宗教画と理想の追求
 
展覧会の中で印象に残り、かつ画像があるものをご紹介いたします。
 
※ここから先の絵画の画像は、すべて展覧会のポスターやちらしを撮影したものです。
 
キリストから鍵を受け取る聖ペテロ(1618年)
 
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イエスから天国の鍵を受け取る弟子のペテロ。
華やかな色彩と明暗のコントラストがはっきりした画面、動きのある構図に目が奪われます。
天使が天幕を掲げていて、いかにも舞台っぽい演出がなされているところなどは、「これぞバロック」という雰囲気に満ち満ちています。
この絵は公表された当時から、その素晴らしさが評判だったそうです。
 
カトリックではペテロが教会の創始者とされていて、キリストがそのペテロに天国の鍵を渡し、玉座に誘っているこの構図は、教会や教皇の正統な権威を象徴するものとして、当時のカトリックの意向に沿うものだったとか。
クライアントの要望を踏まえて、期待以上のものを仕上げる。
グエルチーノが画家として大成功を収めた理由のひとつがうかがえます。
 
優れた画家、というだけでなく、ビジネス感覚もあった人だったんでしょうね。
今も昔も、絵の値段はあってないようなもの。
グエルチーノが画家として活躍していた時代、絵の値段は画家の人気や絵を発注するパトロンの懐具合で決まっていて、明確な基準はなかったらしいのですが、彼は明確に人の頭ひとつあたりいくら、胴体はいくら、下半身はいくら、と描くもののパーツごとに値段を決めていて、その基準をもとに発注された絵の値段を計算してしたそうです。
解説で紹介されていたこのエピソードも、グエルチーノの画家としてだけでなく、商売人としての才覚を感じさせて興味深かったです。
 
放蕩息子の帰還(1627~28年頃)
 
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親からわけてもらった遺産を手に、家を出てふらふら放蕩の生活を送った結果、なにもかもなくしてすっからかんになり、親の元に戻ってきた息子を、年老いた父親はあたたかく迎えいれた、という聖書の話に基づく絵画です。
同じ題材を描いたレンブラントの絵はぼろぼろになった息子をあたたかく迎えいれる、まさにその場面が描かれていましたが、グエルチーノの絵ではすでに親子は和解していて、着替えている場面が描かれています。
右奥のガラス窓から差し込む光が美しく、印象的な一枚でした。
 
聖母のもとに現れる復活したキリスト(1628~30年)
 
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聖母マリアのもとに、死後3日経って復活したキリストが姿を現す、まさにその瞬間を描いた一枚です。
キリストの頭を頂点とした正三角形の美しい構図、キリストとマリアのまとう衣の鮮やかな色、暗い画面にほんのりと浮かびあがるキリストの肉体。
神々しい雰囲気があって、自分もまさにその場に立ち会っているような迫力があります。
かのドイツの文豪ゲーテもこの絵を見ていて、「この絵を見ずにグエルチーノのなんたるかを語ることはできない」と感想を書いているとか…。
「その言葉に納得」の素晴らしい一枚です。
 
展示点数は全44点と少ないですが、どれも大きな絵画で重厚感があるので見応えがありました。
観終わったあとは絵が発する雰囲気を浴びて、すっかりイタリアを旅した気分に…。
 
★Information
東京都台東区上野公園7-7
 
よみがえるバロックの画家 グエルチーノ展
3/3(火)~5/31(日)