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うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

Livre:林典子『人間の尊厳―いま、この世界の片隅で』(岩波新書)

年末年始、実家に帰ったときにゆっくり読もうと思って購入した本。

 

2013年にキルギスの誘拐結婚の取材で、フランス世界報道写真祭Visa pour L'Image、報道写真部門でVisa d'or(金賞)を受賞したことで注目を浴びた、女性フォトジャーナリスト・林典子さんの著書です。


「いま、この世界の片隅で」というサブタイトルにあるように、世界的に注目されているわけではないけれど、非常に厳しい状況に置かれている人たちの日々の生活を追ったドキュメンタリー。

 

6章に分かれていて、それぞれ以下のテーマを取り上げています。

1章 政府の厳しい報道規制と闘って、真実を伝えようとするジャーナリストたち(ガンビア

2章 長く続いた内戦の影響でぼろぼろになった国とそこへ帰ってくる難民たち(リベリア

3章 母子感染でHIVになった男の子とその家族(カンボジア

4章 男性に報復として硫酸をかけられ、顔が焼けてしまった女性たち(パキスタン

5章 東日本大震災直後の被災地の人々(日本)

6章 誘拐結婚。誘拐された女性と誘拐する男性。その家族(キルギス

 

取材はすべて、人々と生活をともにし、その人の性格やこれまでの生き方、生活習慣や社会背景などを理解し、あくまでもその人が生きる日々を切り取る、という姿勢で貫かれています。

(※東日本大震災の写真は、報道機関からの依頼を受けて撮影されたものが多く、例外。)

 

林さんは被写体になっている人々の暮らしの中まで入り込み、寄り添って、その人が抱えている困難な問題や周囲の厳しい状況をあぶり出しています。あくまでも社会に生きる一人の人間としての日々の生活を写真と文で紹介していて、声高に「こんなの許せない!」とか「こうすべき」などと主張していたりはしません。だからこそ彼らが生きている厳しい現実がより強く迫ってきます。


世界で起きている深刻な問題を取り扱った優れたフォトドキュメンタリーとしてだけでなく、林さんが社会問題に興味のある女子学生から、一本筋のとおったタフなフォトジャーナリストになるまでの成長の過程を描いた優れたドキュメンタリーとしても興味深く読みました。


読んでいて一番心に迫ってきたのは、やはり東日本大震災の取材。福島第一原発の事故のあと、避難勧告が出されて誰もいなくなった浪江町の様子。生まれ育った故郷を離れなければならないことをこばみ、102歳で自ら命を絶った男性。あの地震は、これまで疑いもしなかった常識を、すべて根底から覆して壊してしまった。「これからどう生きるのか?」、突きつけられた疑問に対して、まだ私自身の答えは見つかっていません。


まだ中学生の頃に読んで、とても影響を受けた2冊。

もの食う人びと (角川文庫)

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メメント・モリ

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