うたかた日記

流れていく日々の中で感じるよしなしごとを綴ります。

国立劇場 12月文楽公演「ひらかな盛衰記」 12/10

源平合戦を描いた時代物。
木曽義仲と忠臣たちのエピソードを上演。

 

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毎年、わりと若手の人中心に組まれる12月公演。
鑑賞教室の方が気合の入った贅沢な配役で、本公演のこちらは少し変則的。
蓑二郎さんの腰元お筆と、玉志さんの船頭松右衛門、実は樋口次郎兼光が観たくて、前半の日程で鑑賞してきました。

 

木曽義仲と奥方・山吹御前。
それぞれの主君に尽くす樋口とお筆がかっこいい。
そして槌松と駒若君のちんまり感!
人形ならではの可愛らしさ。

 

駒若君を狙う追手たちと立ち回り、重なる心労がたたって息を引き取った山吹御前を、笹の舟に乗せて引いていく笹引の段、咲甫太夫の語りに清友さんの三味線、蓑二郎さんのお筆がばっちりかみ合って、とてもよかったです。

 

後半の樋口次郎兼光が主役になるエピソードは、どうしても最近観たばかりの、歌舞伎の舞台と比べてしまいます…。
感情を爆発させて大きく動く、人形ならではの味わいももちろん面白いけど、微妙で繊細に揺れ動く心のうちは伝わってくる、役者による演技もいいんですよね。
歌舞伎で観てた時は感じませんでしたが、松右衛門内の段、奥を呂太夫が語っていたのもあって、「上方言葉で作られた芝居なんだ」ということを強く感じました。

 

★Information

12月文楽公演

「ひらかな盛衰記」

義仲館の段/大津宿屋の段/笹引の段/松右衛門内の段/逆櫓の段

英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2017/18 バレエ「不思議の国のアリス」

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白ウサギを追って、不思議な世界に落ちた少女アリスの大冒険。
ルイス・キャロル原作の物語が、振付家クリストファー・イールドンをはじめ、素晴らしいスタッフの手によってバレエに。

 

スミレ色のドレスをまとったローレン・カスバートソンの上品でちょっとヘンな子のアリス。
ラウラ・モレーラの怖くておかしいハートの女王。
軽やかに踏むおしゃべりなタップが面白い
スティーヴン・マックレーのマッド・ハッター。
次から次に出てくる個性あふれるキャラクターたち。
まるでおもちゃ箱をひっくり返したような面白さ。

 

あふれるアイディアを見事に形にした振付、音楽、衣装にセット。
そして素晴らしいダンサーたち。
最高のエンターテイメントでした!!

 

★Information

不思議の国のアリス

振付:クリストファー・ウィールドン

音楽:ジョビー・タルボット

指揮:クン・ケセルス

アリス:ローレン・カスバートソン

ハートのジャック:フェデリコ・ボネッリ

ルイス・キャロル/白ウサギ:ジェームズ・ヘイ

ママ/ハートの女王:ラウラ・モレーラ

マジシャン/マッドハッター:スティーヴン・マックレー

横須賀の軍事遺産めぐり その2〜走水低砲台跡

三笠公園を後にして、旗山崎の地に造られた走水低砲台跡へ。

ここも猿島同様、東京湾への外国の艦船の侵入を防ぐために作られました。

 

草木が生い茂ってぼうぼうだったのを整備し、2016年からガイド付きツアーのみに限定し、公開されているそうです。

 

外から見るとただの小山で、ここに砲台が築かれていたとは思えません。

 

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明治18年に着工し、翌年の明治19年に竣工。

27㎝加農砲が4門設置されていました。

しかし、日清、日露戦争では使用されることなく、戦争は戦艦から飛行機の時代へ。

昭和9年には陸軍施設から除籍されたものの、太平洋戦争終結までは稼働可能な状態だったそうで、砲台は4つともきれいな状態で保存されていました。

 

こちらは第一砲座。

台座には大砲が据えられた跡が生々しく残っています。

 

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第四砲座。

 

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そのほか、レンガ造りの弾薬庫や兵舎も、中に入って見学させていただきました。

明治時代初期のレンガ造りの建物の特徴である、美しいフランス積みが見られました。

 

そして、砲座をぐるりと回るように設けられた散策路からの眺め。

 

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この茂みの下には、江戸時代、台場が設けられていたと考えられているそうです。

ここは目の前を浦賀水道が通り、対岸の房総半島にある君津の街も見えます。

防衛上、重要な拠点だったことがよくわかる光景です。

 

当時の日本の国家予算の大部分を注ぎ込んで作られた設備のひとつ。

実際に戦闘で使用されることはありませんでしたが、この辺りまでやってきたロシアの艦隊が、いくつも設けられた砲台を見て引き返した、という記録が残っているそうです。

「持つことに意味があったんです。」というガイドさんの言葉に、理想だけではすまされない、国防や戦争をめぐる甘くない現実を痛感しました。

横須賀の軍事遺産めぐり その1〜記念艦三笠

横須賀市×はとバスのタイアップ企画ツアーに参加して、横須賀の軍事遺産めぐりをしてきました!

 

横須賀市には、帝都東京、そして横須賀軍港などを守るため、明治から昭和にかけて砲台や海堡が築かれ、東京湾要塞として整備されていました。

その中の猿島要塞&走水低砲台跡を、ガイド付きのツアーで見学できる、というのが目玉のコース。

 

東京駅を出発して一路、横須賀へ。

三笠公園内にあるフェリー乗り場から、猿島へ渡る船に乗る予定が、強風のため、船は欠航!

予定は変更となり、三笠公園の散策の時間に。

せっかくなので、公園内に保存されている戦艦三笠を見学しました。

 

公園には東郷平八郎の像があります。

奥に見えているのが、戦艦三笠。

 

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三笠は東郷平八郎司令官の指揮のもと、日本の連合艦隊の中心として働き、日露戦争中の日本海海戦において、ロシアのバルチック艦隊に歴史的な勝利をおさめた戦艦です。

その勝利を記念して、大正15年から記念艦として保存公開されているそう。

 

中は当時の様子が再現されていて、最新鋭の技術だったもろもろや、海での戦いを中心とした日本近代の歴史を学ぶことができます。

 

味方の船から敵の戦艦を発見した旨の報告を受け取り、勝利に結びついた電信室。 

当時は最先端の技術だったモールス信号に、コイルを使った三六式無線受信機。

 

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15センチの副砲の操縦法を模型で実演解説した展示。

 

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砲兵たちはここに10人ほど常時つめていて、武器の手入れはもちろん、食事、睡眠もこの部屋でとったそうです。

寝るときはハンモックを吊るして。

 

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30センチの前部主砲。

 

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上甲板は自由に歩くことができ、実際に東郷平八郎が指揮をとったという最上艦橋にも上がることができます。

東郷平八郎司令官はじめ、秋山真之参謀など主要メンバーの立ち位置がマーキングされているので、同じ場所に立ってみることも。

 

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立ってみました!!

 

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風が強く吹いているのもあり、ただ立っているだけでも結構怖かったです。

実際に海の上を走っているともっと揺れるでしょうし、周りで砲火が飛び交っているなか、ここに立って指揮をとることを想像すると、相当怖くて、大変なことだと思います。

 

そしてすぐ近くに見えるのに、渡れない猿島…。

島の周囲の海流はとても早く、かつ桟橋以外は天然の崖で囲まれているため、海が荒れると船が接岸できなくなってしまうそうです。

 

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上甲板から中甲板に降りると、資料展示室と当時の部屋の様子を再現した空間に。

 

東郷平八郎が実際に着用していた礼服など。

 

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長官室。

海の伝統を受け継いで、艦内は完全なるピラミッドの縦社会。

一番偉い長官室は広くて、天窓からたっぷりと光が降り注ぐ明るい空間。

素敵でした。

 

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かなり充実した展示で1時間半があっという間に過ぎました。

 

続いて、旗山崎に作られた走水低砲台跡に向かいます。

秀山祭九月大歌舞伎 夜の部「ひらかな盛衰記」 9/10

秀山祭九月大歌舞伎、夜の部「ひらかな盛衰記 逆櫓」を幕見してきました。

 

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まずなんといっても吉右衛門さんの樋口が大きい!!
気のいい船頭・松右衛門から、木曽義仲の重臣・樋口次郎兼光への鮮やかな変化。
正直、身体や声には老いを感じましたが、以前ほど力みなく、さらさらと演っている感じもまた魅力的。

 

そして、歌六さんの権四郎が素晴らしいです!!
家族愛に溢れていて、ジジばかで、お天道様になんら後ろ暗いところのない一本筋の通った真っ正直な爺。
この爺だからこそ、樋口も必死で説得するし、理解が得られてほっともするんだよね、という説得力があります。


畠山重忠に縄打たれる場面の吉右衛門さん、歌六さん、二人の目の演技、すごくよかったです。

 

そして権四郎の娘・およしは東蔵さん。

いつもはもう少し老けた女性の役が多いのですが、今回は幼い子どものいるお母さん役。

巡礼の途中、夜に泊まった宿屋で起こった捕物騒ぎのせいで、取り替え子になってしまった槌松は死んだと聞かされて、形見の名前を書いた笈摺を抱きしめて「母じゃわいのぉ」と嘆く場面は本当に哀しくて…。

東蔵さんの演じる女性は、いつも理屈抜きの母性愛がほとばしっていて素敵なのですが、今回は歌六さん演じるお父さんの権四郎と二人、槌松を目の中に入れても痛くないほど可愛がっていたことがよくわかり、だからこそ亡くなったと聞かされた後の喪失感が辛く、やり場のない哀しみがこちらの胸にも迫ってきました。

逆櫓の場面は遠見の演出で、子役を使った「やっしっし」も観られましたし、艪を使った大立ち回りもあり、「こういう歌舞伎が観たかった!!」を堪能しました。

★Information

秀山祭九月大歌舞伎

歌舞伎座

夜の部「ひらかな盛衰記 逆櫓」

9/1(金)〜25(月)

 

船頭松右衛門 実は樋口次郎兼光:中村吉右衛門

漁師権四郎:中村歌六

お筆:中村雀右衛門

船頭明神丸富蔵:中村又五郎

同 灘吉九郎作:中村錦之助

同 日吉丸又六:中村松江

松右衛門女房およし:中村東蔵

畠山重忠:市川左團次

 

9月文楽公演 第二部「玉藻前曦袂(たまものまえあさひのたもと)」 at 国立劇場小劇場 9/9

9月文楽公演、第二部「玉藻前曦袂(たまものまえあさひのたもと)」を観てきました。

 

一昨年、2015年に大阪の国立文楽劇場で上演され、大変評判だった舞台。

待望の東京での公演です。

 

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三国伝来の金毛九尾の狐。
この狐が世界を魔道の世にしようと、天竺(インド)、唐土(中国)、そして日本と三か国で暗躍する物語。
その日本編を上演。

妖狐ちゃん(勘十郎さん談)、大活躍。
帝の寵姫・玉藻前を食い殺し、怪しく光って、宙を飛び、ラストの七化け早替わりショーまで、ケレン味たっぷりで、勘十郎さんのオンステージ。
特殊な首を使っての、美しい娘から狐への変化は、本当に一瞬で鮮やかでした。

かと思えば、道春館の段は花の盛りの美しき姉妹の命をかけた双六勝負。
姉妹の母とかつて娘を捨てた父親、不思議の縁がからまって、涙涙のずっしり聞き応えのある場面です。

千歳太夫&富助さんの安定コンビが、今回も聴かせてくれました!

人形遣いも適材適所で、悪から善に戻る金藤次の玉男さん、後室萩の方の和生さんはさすが。

簑二郎さんの遣う、恋に身を焦がす姉娘・桂姫の美しさが印象に残りました。

 

文楽では珍しい、仕掛けたっぷりな面白さがあり、かつ聴かせどころもあって、楽しい作品。

物語の筋は予定調和(狐が暗躍するも、成敗されてしまう)で、聴きどころの道春館の段も決してよくできた場面ではなく、ちょっと物足りない印象もありますが、十二単の衣装や宮中が舞台の雅びで華やかな見た目も相まって、「文楽を見るのは初めて」という人にぴったりの作品だと思いました。
ケレン味たっぷりな演出と、それを存分に生かす勘十郎さんの自在な人形遣いで、客席は大盛り上がり。

文楽でこんなに沸く客席を見たのは初めてかも…」というほどでした。


かつて1982年に通しで上演したという、天竺編、唐土編もかけてくれないかなぁ…と思います。
ぜひ通しで観てみたい!!

MINIATURE LIFE展 田中達也 見立ての世界

新宿髙島屋11階の特設会場にて開催中のこちらの展示会に行ってきました!

 

ミニチュア作家・田中達也さんによる身の回りの品とジオラマ用人形による見立て。

夢たっぷりユーモアたっぷりの、小さな小さな世界。
乱歩の『押絵と旅する男』のように、
「作品の中にぴゅっと入ってしまいたい…。」

そんな気持ちになる世界が広がっていました。

 

数作品を除き撮影OKでしたので、私の独断と偏見による数作品をご紹介します。

 

まずはほんわか可愛い世界。

「クモワッサン」

 

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目の付け所がステキ。

「北海道の雄大なポテ地」

 

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カッコイイ!!

「果汁が多いと荷重が心配」

 

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ちょっとノスタルジックな世界。

「新パン線」

 

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そして、ダントツに心をつかまれたのはこちら。

「帰り道」

 

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部分のアップ。

 

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この、ちょっともの悲しい雰囲気がたまりません。

目の付け所やアイディアのセンスはもちろん、ライティングやカメラの腕も確かなんだなぁということがよくわかりますね。

いろんな技術に支えられての小さな世界。

 

そして作者の田中達也さんは1981年生まれ。

私と同年代なので、おそらく感覚が似ているんだと思うのですよね。

紹介した作品のほかにもスポーツや宇宙、旅行、おとぎ話のようなメルヘンの世界など、さまざまなテーマを作品にされているのですが、どれもどこか懐かしさを感じます。

子どもの頃、どんなものが好きだったのかなど、アイディアの源になっているであろう世界をお聞きしてみたいと思いました。

 

 

MINIATURE LIFE ミニチュアライフ

MINIATURE LIFE ミニチュアライフ

 

 

MINIATURE LIFE2 ミニチュアライフ2

MINIATURE LIFE2 ミニチュアライフ2